遠くの空からゴロゴロと小さな雷鳴が届いた。
そういえば、朝の天気予報で天気が安定しない1日だと言っていたなぁ。
このまま近づいてくるのだろうか。
そう思った時に以前の彼女を思い出し、そのまま彼女の自室へと足早に向かった。
「近藤さん、急いでどうしたんですか?」
廊下でパタリと出会った夢子ちゃんは意外と普通で、ひとまずホッと胸をなで下ろした。
「さっきから雷鳴り出したから。夢子ちゃん大丈夫かなって」
「そういえば雷鳴ってますね。…で…大丈夫とは…?」
きょとんと小首を傾げる夢子ちゃんは相変わらず可愛い。
しかし、それに違和感を覚える。
「雷、苦手じゃなかった?」
「雷ですか?いえ、それ程苦手ではないですよ」
その返答に、今度は自分が首を傾げる番だった。
「前に……屯所に来たばっかりの頃、雷が苦手って言ってなかったっけ?」
「え?そんな事言いましたっけ?」
「言ってたよ。それで雷が鳴り止むまで一緒にいたじゃん」
また可愛いらしく首を傾げながら思い出そうとしていた夢子ちゃんだが、あぁ!と手を打ち、あの時を思い出したようだ。
「ありましたね。あれは…えっと……嘘…?です…?」
「え?」
何故疑問形なのか。嘘とはどういう事なのか。
先程からお互い順に首を傾げ合っている。
「えっと…その……あの時は、雷が怖いわけじゃなくて、本当は近藤さんと一緒に居たかったんですけど、上手く言えなくて…それでつい怖いって……嘘ついてすいません」
しゅんと肩を落とす夢子ちゃんとは反対に、自分は顔の締りが無くなるのを感じた。
「そ、そんなの言ってくれれば良かったのに!」
「だって!そんな事言えば、私が近藤さんの事大好きなのバレちゃうじゃないですか!……あの頃はそんな事言えなかったから我慢してたんですよ…」
軽く口を尖らせながらこちらを睨み上げる彼女は、愛おしくて堪らなかった。
「夢子ちゃん、抱きしめていい?」
「えっ!?急に!?ここでですか!?」
顔を紅くしながら慌ててきょろきょろと誰もいない廊下を見回している夢子ちゃんに向けて、両手を広げる。
「…だめ?」
「……ずるいです」
そう言いながら一歩近づいて、ぽすんと俺の胸へと入って来てくれる夢子ちゃんをぎゅうと抱きしめる。
すると、甘いような優しいいつもの彼女の香りに包まれているように感じて、身も心も満たされるようだった。
「あの…近藤さん」
「ん?」
「やっぱり、雷…こわいです」
「え、そうなの?」
「だから……鳴り止むまで一緒に居てもらっていいですか?」
見下ろせば、いたずらっ子のような眼をした彼女と視線が合った。
「もちろん」
笑顔でそう答えれば、彼女もまた、嬉しそうに顔をほころばせた。
こんな甘い嘘ならいつでも歓迎しよう。
「じゃあ、今からお風呂なんで、出たらお部屋に行きますね」
そう言って夢子ちゃんは、抱えていた荷物に視線を落とした。
「じゃあ、俺も着替え取ってくる!」
「え?」
「雷止むまで一緒に居なきゃな!」
「いえいえ!まだ大丈夫です!後で行くので…」
「ちょっと待っててくれ!行ってくる!」
「こ、近藤さんッ!待ってください!」
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