桜も満開でぽかぽかと春の陽気が漂う昼過ぎ。
ゆったりとしたぬくいこの時間は、うとうとと昼寝に興じるにはピッタリである。
いつも忙しそうにしている近藤が少し空いた時間に居眠りをしてしまうのは無理もない話だ。
週末の予定を聞きに近藤の自室にやってきた夢子が部屋の真ん中でお日様に当たりながらすやすやと眠っている近藤を見て、くすりと笑みを浮かべた。
「毎日お疲れ様です」
横向きで眠る近藤にそっと近付き、頭元に座ると小さな声でそう言うと少しかたい近藤の髪に優しく触れてひと撫でする。
夢子の細い指に合わせて髪が動き、ぴょんと元に戻っていく。
何度かそうしていても起きる気配が無い近藤に、夢子はいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
そのまま近藤に合わせて自身も横にころんと寝転がる。
いつもは目を合わせればまっすぐ見つめ返してくるため、照れや恥ずかしさであまりまじまじと顔を見る事ができないが、寝ている今ならそんな事は無いとここぞとばかりにじっと見つめる。
意外と綺麗に整っている眉毛やまつ毛、鼻筋に少し厚めの唇、整えられた髭。
普段は触るのにも緊張するそれらにそっと触れて感触を楽しむ。
「んふふ」
楽しそうに笑いを零し、畳の上に力なく置かれている近藤の右手をそっと持ち上げる。
自分よりも一回りも二回りも大きく太い男らしいその手に自分の手を合わせてみたり、指を絡めたり、ふにふにと感触を楽しんだり。
思う存分手を触った後はそのまま自分の頬へと当てる。
あったかいいつもの感覚に心もほわっと温まった。
すりすりと頬にすりつけ、その手の平にそっと口付けた。
心がくすぐったくて楽しくて、小さく笑ってまた頬にその手を当ててぎゅっと抱きしめた。
それでもまだ起きる気配がない近藤に、夢子は欲を出していく。
更に近藤へと身体を近付け、そっと腕を回して抱きつく。
大好きなその場所にすっぽりと収まり、さっきまで触っていた近藤の右手を自分の背中へと回して自分から包み込まれにいく。
その多幸感にゆっくり息を吸って、まるで猫のように近藤の胸元に頭を擦り付ける。
「んー……はぁ……」
散々感触を楽しんだ夢子は満足気に息を吐いてゆっくりと近藤から離れた。
満足したとはいえ、それは一瞬で少し身体が離れてしまった今ではまた物足りなさを感じてしまう。
いい加減まだ残してきている仕事を片付けに戻らなくてはいけないし、何よりあまり調子に乗ると近藤が起きてしまうかもしれない危険もある。
名残惜しさを感じながらも再度近藤の髪を優しく撫で、そのままそこにキスを一つ。
「だーいすき」
とてもとても小さな囁きを近藤の耳元に落とし、夢子は後ろ髪を引かれながらそっと近藤の部屋を後にした。
廊下を歩く夢子はご機嫌そのもので、鼻歌なんか歌いながらスキップで食堂へと向かって行った。
それから数秒、廊下の夢子の気配が遠ざかっていくのを自身の大きな心臓の音を感じながら待っていた近藤は、はぁぁぁぁと大きな息を吐き出しながら両手で顔を覆った。
「何!?今の!夢子ちゃん!?何してた!?」
ほとんど初めから目を覚ましていた近藤は先程の夢子の自身への行動を思い出してきゅんきゅんとときめく。
「あの可愛さは反則だろうぅぅ…」
夢子への愛おしさを募らしながら顔を真っ赤に染めて、しばらくゴロゴロと畳の上を転がり続けることとなった。
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