夢子は近藤の自室の扉の前に立ち深呼吸する。
幾度となく訪れたその部屋だが、今日はいつもより緊張していた。
一つ、大きく空気を吸い込んだ夢子は、部屋の中へ向けて彼の名前を呼んだ。
愛しい声が返ってきたのを聞いてスッと戸を引き部屋の中へと入る。
「忙しいところすいません。どうですか、準備終わりそうですか?」
そう言って、荷物を詰めている近藤の近くに腰を下ろすと、それを受けた近藤がちょうど終わったところと鞄を閉めて夢子の方へと向きを変えた。
そして夢子の目を見てどうしたのかと問いかけた。
「あの…用事っていう程の事ではないんですけど…」
「ん?」
もじもじと口ごもりながら視線をそらしたり上目遣いになったりと落ち着かない様子の夢子を見て、近藤はもしかして、と両腕を夢子の方へ向けて広げてみた。
それを見た夢子はパァァと表情を明るくして近藤の胸へと飛び込む。
熱と香りに包まれ夢子は幸せを感じ、大きな背中へと腕を回してぎゅうと抱きついた。
こうして素直に自身に甘えてくる夢子が近藤は大好きだった。
「すまねぇ。急な出張なうえに二週間もだなんて」
「ううん。大丈夫です。ちょっと寂しいだけ」
近藤の胸にピッタリと耳を寄せているから近藤が喋る度に声が直接振動として伝わってくる。
まるで声にも包まれているように感じ、近藤の一部になった錯覚を抱く。
「俺はめちゃくちゃ寂しい!」
声こそふざけた響きだが、夢子を抱く腕はぐっと力が籠り、気持ちが顕著に現れていた。
こうしてストレートに愛を伝えてくれる近藤を夢子は好きで堪らない。
しかし、今日はその近藤の胸をゆるく押して離れる。
その様子に近藤は軽く首を傾げて夢子の顔を覗き込んだ。
「あの、近藤さん、えっと……」
また先程のようにもじもじと口ごもる姿に、どうした?と優しく寄り添う。
「跡…付けてもいいですか?」
シャツの胸元にスーッと指を這わしながら、恥ずかしさから顔を赤らめて目を伏せている夢子の意外な申し出に頭が回らず、近藤は、え、は?と口をパクパクと動かすだけになっている。
「会えない間、私の事忘れないようにって……」
ダメですか?と頬を染めながら不安そうに上目遣いで見上げてくる夢子にぎゅうと心臓が暴れる。
「ダメじゃねぇ!!」
思わず大声で叫びながら夢子の肩を強く掴む。
その勢いに一瞬驚いた夢子だがふっと照れた笑顔になって、ありがとうございますと礼を伝えた姿に、近藤は更に心臓の鼓動を早めた。
「じゃあ…失礼します…」
照れながらも近藤のシャツのボタンを一つ二つと開けていくその様に、期待が膨らむ。
「ここら辺…かな?」
小さく呟いて、目立たないようにと衣服に隠れるよう、はだけさせた胸元にゆっくりと顔を近付けていく。
そんな一瞬なのに、近藤には長い時間に感じられる。
胸元に柔らかい唇が押し付けられる感覚と薄く吸われているような感覚。
くすぐったいようなそこから、どんどんと熱が全身に回るようだった。
そうして数秒、ちゅっと可愛らしい音を鳴らして夢子が近藤から離れた。
「あれ?」
先程まで自身の唇が触れていた場所を撫で、夢子は軽く首を傾げていた。
「あの、もう一回いいですか?」
「お、おう…」
納得がいかなかったのか、そう言って夢子は再び近藤の胸元へと唇を寄せて吸い付く。
今度は先程よりも長く。
同じく可愛らしい音を鳴らして離れた夢子だが、またそこを撫でた後、再び別の場所へと吸い付いた。
それを不思議に思いながらも、何度も訪れるその感覚にゾクゾクと全身が震え、否応なしにも下半身に熱が集まってくる。
数度それを繰り返した後、夢子は近藤へと視線を上げた。
「すいません…うまく付かなくて…」
何度も吸い付いた場所を指で撫でながら、夢子は眉を下げていた。
その場所を見れば、確かにうっすらと赤みを帯びている箇所がいくつかあるが、数時間経たずとも消えてしまいそうな程度のものであった。
「時間とらせたのに…すいません…」
しゅんと落ち込んでしまったその様子も、一所懸命に跡をつけようとしていた姿も、全部ひっくるめて近藤にとっては愛おしさが募る。
「次は俺にも付けさせて」
えっ?と驚いた夢子の着物の襟元を緩め、返事を待たずにそこへと唇を寄せる。
触れるだけのキスをすれば、ピクリと身体を震わせた夢子が小さく声を上げた。
嫌がる素振りを見せないのを確認し、そのままそこへと口を開いて吸い付く。
「んっ…」
チリッと小さな痛みが首筋に走り、それがゾクゾクと夢子の背中を這っていく。
数秒してちゅうと音を立てて唇を離し、再度キスを落としてから離れる。
しっかりと赤みを帯びているそこを太い指でなぞり、近藤は満足気に頷いた。
「付きました?」
自身からは見えない位置のため、近藤に様子を伺う。
「うん」
そう言って楽しそうに笑う近藤の目の奥に熱を感じ、夢子はドキリとした。
「でも、もう少し」
そう言って近藤は更に夢子の着物をずらして先程より下に吸い付く。
もう一回。もう一回。もっと。
着物を退けて徐々に下がっていくそれは、もう少しで夢子の胸の頂きへと到着する程の場所へ。
「んっ…はっ……近藤さん……」
「夢子ちゃん…」
真っ赤に蒸気した顔で何度も吐息を漏らしていた夢子の唇へと自身の唇を重ねる。
ゆっくりと舌で舐めれば、薄く開かれる口内へと自身の舌を捩じ込んだ。
小さな舌を探して追いかければ、いつものように遠慮がちに応えてくれる。
その可愛らしさに近藤はもっともっとと食いつく。
静かな部屋にはくちゅくちゅと粘液が混ざる音と合間合間に酸素を取り込もうとする必死な呼吸音だけが響き、それがまた二人の熱を高めていく。
「はっ…はぁ……近藤さん…もう……時間が…」
「夢子ちゃんがいけねえ。こんな煽るから」
再び夢子の口を塞いだ近藤は、そのまま大きな手をずいぶんとずらされた夢子の着物の襟へと伸ばし、隠れている部分を晒そうとしたその時。
「局長ー!そろそろ行きますよー!迎えの車が来ましたよー!局長ー!」
と遠くから隊士が呼ぶ声が近付いてくるのが聞こえた。
二人はビクリと動きを止めてお互いの顔を見合わせる。
「わ、わかった!すぐに出るから先に行って門で待っていてくれ!」
この状況を見られるわけにはいかない。隊士が部屋に近付く前にと近藤は大声を張り上げた。
わかりました。と返事をして、隊士が去っていく気配を感じ、二人はほっと息を吐いた。
「すまん、つい…抑えがきかんかった…」
「い、いえ、私こそ、すいません…」
顔を赤らめたままいそいそと自身の襟元を引き上げて着物を直す夢子の姿に名残惜しさを感じて仕方がないが、そんな事を思っても出発時間が変わる訳でも無いと、近藤は立ち上がって衣服を整えようとした。
そこに夢子の細い指がのびてきた。
「跡を付けるのって難しいですね」
もうすでに先程よりも薄くなってしまったそこに指を這わせたあと、自身が開けていったボタンを今度は一つ一つ閉めていく。
「跡は無いけど、たまに私のこと思い出してくださいね」
上まできっちりとボタンを閉めた夢子は近藤を見上げて微笑んだ。
そんな夢子を近藤はぎゅうと抱きしめる。
「こんだけされて忘れられるわけないだろ」
そう熱っぽく言って強く唇を重ねた。
「帰ってきたら、続きしような。絶対!そんでもっとキスマーク付けさせてくれ。やり方も教えるからいっぱい付けてくれ!」
そう強く伝える近藤に一瞬押されながらも、さっきまでの熱を思い出した夢子は、二週間後を想像して顔に熱が集まる。
「…はい…お願いします…」
照れながらも期待を込めた目でそう答える夢子に、近藤は嬉しそうに目尻を下げながらもう一度キスをした。
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