気持ちが見えない


真選組にお邪魔になってから一週間と二日。
お客様だからゆっくりしててと皆に気を使ってもらい、暇ならば近藤さんの相手をしてやってくれと優しさをくれる。
しかし、それに甘えてしまうわけにはいかなかった。
ボロを出してしまうのがこわかった。

しかし引きこもっているわけにはいかない。
屯所には女中さんらしい女中さんはおらず、隊士の方々が交代に屯所内の家事や雑用をこなしていた。だから、そうなるのは必然で、私は真選組の家事手伝い、女中見習いとして働かせて貰うことになったのだ。




「夢子さん、お疲れ様です。そろそろ休憩してくださいね」

今日の分の洗濯物を干し終わったところで、隊士の方が声をかけてくれた。

「ありがとうございます。お言葉に甘えて少し休ませてもらいますね」

ふぅと息を吐いて、大きく伸びをした。
朝から何枚の服を干しただろうか。
疲労もあるが、それより達成感と僅かながらも近藤さんや真選組の力になれている事がとても嬉しかった。

縁側へと腰を下ろし、太陽に照らされながらはためくシャツを眺めていた。

「夢子ちゃん、お疲れ」

「あ、近藤さん!お疲れ様です!」

その声に慌てて立ち上がり、振り向いた。

「いいよ、いいよ、座って。実はさっき饅頭もらってさ。一緒に食べない?」

そう言って私の隣に座ると、美味しそうな手のひらサイズのお饅頭が二つ乗ったお皿をスっと私の方へと差し出した。

ちょうど疲れているおやつ時に甘いもの。しかも近藤さんと一緒に。

なんと素晴らしい組み合わせか。

しかし。

「すいません、まだもう少し仕事が残っていて…」

「いいじゃん、そんなの後で俺も手伝うし、一緒に休憩しよう」

「いえ、急ぎの仕事で…すいませんがそれは他の方に差し上げてください」

そう伝えると、ぺこりと頭を下げて目を合わさないように急いで走り出した。







慌てて走って行ってしまった夢子ちゃんを見届けて、がっくりと頭を垂れた。

このような事は初めてではない。
何度か夢子ちゃんと2人で話がしたくて誘ってはいるのだが、全て今回のように逃げられてしまっていたのだ。

大きく溜め息を吐いて、くしゃりと頭をかいた。

「よぉ、近藤さん。こんな所で何してんだ?」

自身を呼ぶ声に頭を上げれば、トシと総悟が並んでこちらへと歩いてきていた。

「俺…夢子ちゃんに嫌われてんのかなぁ……」

「はぁ?んなこと…」

「そうじゃないですかィ。あいつ、近藤さんを避けているみたいですし」

「おい!総悟!」

「だよなぁ…」

総悟の言葉に更にとどめを刺された。
やはり、周りから見ても俺は嫌われているらしい。

「何でだと思う?」

「さぁ?生理的に無理なんじゃねぇですかィ?」

「おい!」

「そうなのかなぁ…これでも一応婚約者って事なんだが…」

「まあ、それも親が言うから仕方なくってやつですかねィ」

「総悟テメェ!いい加減にしろ!そんな事わかんねぇだろ!もしかしたらまだここに慣れてねぇだけかもしれねぇじゃねぇか!それに出会って間もない男にいきなりベタベタできねぇだろ!」

どんどんと肩を落としていく俺を見かねて、トシがフォローを入れてくれたが、総悟の言葉と違い、俺には殆ど響かなかった。

「ったく…近藤さん。あんた、そんなタイプじゃねぇだろ。気に入ったら相手が嫌がろうが俺らが止めようが関係ねぇじゃねぇか」

そう言われて、ハッとトシを見上げた。


そうだ。こんなのらしくねぇ。


立ち上がった近藤は、もういつも通りの彼に戻っていた。




 





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