ザクザクザクザクザクザクザクザク…
「…………あーーーもう!刻んでも刻んでも終わらーん!このチョコめっ!残滅してやる!」
「今年もご苦労様。」
「あ、半兵衛。そう思うんやったら刻むの手伝ってよぅ。」
「常連さんはみんな夢女君の手作りチョコを楽しみにしてるんだから、君一人で作らないとね。」
「うぅ…」
「別に強制ではないのだから今年からやめてもいいんだよ?」
「いや、せっかく来てくれるおっちゃん達に日頃の感謝をプレゼントするんよ。」
「じゃあ頑張ってくれたまえ。」
「はい…。」
「はい、どうぞ。うちの気持ちです。」
「お、今年も夢女ちゃんからバレンタインのチョコ貰えるなんて嬉しいねぇ。」
「俺なんか何年ぶりやろ。最後にもらったんは娘が10歳の時かなぁ…懐かしいなぁ。」
「おっちゃん達にはいつもご贔屓にしていただいてるからね。頑張って愛情込めて作りました。」
「…半兵衛様、あれって何すか?」
「あれはバレンタインといってね、年に一回女性がチョコレートという甘味を好意を寄せる男性に気持ちとチョコレートを渡す行事だよ。」
「では…夢女はあの客を慕っているという事…なのでしょうか。」
「ふふ…バレンタインでは普段世話になっている者や友人にも感謝の気持ちや労いの意味を込めてチョコを渡す事もあるんだ。だからあれは好意より日頃の感謝の気持ちを込めてだね。」
「そうですか。」
「へぇー。だから昨日夢女ちゃんが台所でずっと作業してたんすね。何かすっげーいい匂いしたから1つ摘まもうとしたらおもいっきり殴られたんすよね。」
「毎年、この日は夢女君の手作りチョコ目当ての客が多いからね。作る量も多いから大変みたいだよ。ここは社宅のすぐ側の食事処だから基本来るのは独身や単身赴任者だし。」
「成る程、だから今日は満席なんすね。でも、何時もは少ない女性客も多いっすけど…。」
「あぁ、それは逆で…」
「半兵衛さーん!」
「…ちょっと失礼してくるよ。」
「半兵衛さん!こんばんは!」
「いらっしゃい。久しぶりだね。」
「覚えてくれてたんですか!嬉しい!あの…今日バレンタインじゃないですか。それでこれ…良かったら受け取って頂けませんか?」
「僕にかい?ありがとう。嬉しいよ。」
「こちらこそ!受け取って貰えて嬉しいです!……」
「成る程。女性客から貰うって事もあるんすね。」
「ふん。くだらん。」
「すいませーん!おにいさーん!」
「はーい、すぐ行きまーす。」
「ほらっ来たよ。渡しちゃいな。」
「?」
「これ、どうぞ…。」
「あ、もしかしてちょこれいとっすか?嬉しいっす!」
「…喜んで貰えたなら良かったです…。」
「でさぁ、おにいさん。あの銀髪のおにいさんも呼んできてくんない?」
「三成様っすか?ちょっとまってくださいね。おーい、三成様ー!ちょっと来てください!」
「…なんだ。」
「あ、みつなり君っていうの?ほら、あんたも渡しちゃいな。」
「あ、えっと…あの、これ、どうぞ!貰ってください。」
「なんだこれは。」
「や、やだなぁ三成様〜きっとさっき話してたちょこれいとっすよ!」
「いらん。」
「なっ……!」
「え…。」
「ちょ、ちょっと三成様!す、すいません、かなり照れ屋なもんで…。」
「左近、貴様……。」
「あー!三成様!さっき秀吉様が手伝ってくれって呼んでましたよ!早く向かいましょう!ねっ!」
「何!?貴様、何故それを直ぐ様私に言わない!」
「…あ、これ三成様に渡しときますんで!照れ屋で恥ずかしがりなもんですいません…!」
「あ、いえ…大丈夫…です…。」
「それじゃあゆっくりしてってくださいね。」
「………。」
「………あいつはやめとけ。」
「…うん……ぐすっ。」
「ごちそうさーん。」
「ごちそうさまでした。今日はいつにも増して忙しかったなぁ。皆乙ーーー!」
「ふふっ。お疲れ様。毎年の事ながらバレンタインデーは満員御礼だね。特に今年は女性客が多かったようだし。」
「ほんと今日は忙しかったっすね。俺も結構ちょこれいと貰っちゃいましたよ。」
「おーこれは大漁やなぁ。流石チャラいイケメン!」
「え、誉めてる?それ。…そういやぁ三成様も結構貰ってましたよねぇ?」
「へー流石イケメン!良かったやん。」
「私はこのようなもの興味ない…。」
「三成君、客商売なんだから少しは愛想を振り撒かないとね。ましてや女性の好意を無下にするだなんて言語道断だよ。」
「申し訳ありません!半兵衛様!」
「そうやでー。三成のせいで常連客が離れたらどうしてくれるんよ。」
「煩い。黙れ。」
「え、反応違いすぎひん?」
「それは三成なりの照れ隠しよ。」
「なっ刑部!何を…!」
「さっきも客相手にいらんとか言っちゃうんで咄嗟に照れ屋で恥ずかしがりでーって誤魔化したんすよー。」
「あんなものいらん。それだけだ。」
「そっかー。三成チョコいらへんのか。じゃあ三成以外にあげることにするよ。」
「は?」
「はい、今日はバレンタイン仕様の特別デザートです。」
「ありがとう夢女君、嬉しいよ。今年はまた凄く手が込んでいる様だね。」
「そうそう!今年はそれぞれのイメージにしたんよ。半兵衛のはホワイトチョコのガトーショコラをメインに。左近のはオレンジピールたっぷりのブラウニーをメインにしてみました。」
「おー!うまそー!夢女ちゃんありがとう!」
「そう言ってもらえてよかったー。で、ブランデー多目のガナッシュは秀吉の。」
「うむ。今年のものはまた一段と良さそうだな。」
「へへ。で、刑部は抹茶の生チョコです。」
「われもか。」
「もちろん!前に抹茶アイス食べてたから抹茶好きなんかなぁーって思って。」
「よう覚えておるな。」
「もちろん。皆、いつもありがとうございます。感謝の気持ちを受け取ってください。」
「おい。」
「何?三成。」
「…私の分は無いのか?」
「三成はチョコいらんねんやろ?うちが自分で食べるからいいもーん!」
「なっ!その様なこと、私は言っていない!」
「えー…チョコいらんって断ってたんやろー?」
「奴等からの物等いらんというだけだ。貴様からのであれば断る道理はない。」
「……え、あ……。そ、そっか、うん。じゃあこれ、どうぞ。コーヒーのトリュフ。三成はコーヒー好きだし、甘すぎるのは苦手かと思って。」
「…私の事も考えてくれていたのだな……礼を言う。」
「や、こちらこそ!その…いつもありがとうございます。」
「半兵衛様、三成様のあれって絶対自分で何言ってるか気付いてないっすよね。」
「そうだろうねぇ。まだ何も自覚はしていないだろうね。まぁなんにしても夢女君をそう易々と渡す訳にはいかないけどね。ねぇ、秀吉。」
「もちろんだ。三成とて例外ではない。」
「ヒヒッヒハッ…これは…」
「…うわぁ…」
「あ、ちなみに皆さん。来月にホワイトデーがあることをお忘れなく。」
「ほわいと?」
「そう。バレンタインのお返しに、今度は男性が女性に気持ちや返事と共に物を渡す行事なんだ。ちなみにバレンタインの時の三倍の値段の物を贈ると言われているんだ。」
「え、そんなのがあるんすか!?」
「楽しみにしてますからね。ね!」
「………これ、返品していいっすか?」
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