手編みのマフラー


「夢女君、何をしてるんだい?」

「あ、半兵衛。マフラー編んでるねんけど、やっともうすぐ完成すんねん。」

「へぇ。誰かにプレゼントかい?」

「そうそう。よくわかったな。」

「………もしや彼氏かい?」

「え!?ちょっそんなんちゃうよ!」

「………。」




「夢女ちゃんに彼氏!?」

「賢人よ、それは真か?」

「僕もはっきりとはわからないけどね。彼氏では無いにしても手編みのマフラーをプレゼントするなんて只の友人ではないと思うんだ。」

「相手がどうであれ、夢女が慕っているということですか。」

「その可能性は高そうだね、三成君。」

「なるほど。夢女ちゃんの片想いって可能性もあるってことっすね。」

「だが、夢女に想いを伝えられ、断る男などおらぬ。」

「そうだね、秀吉。夢女君に男が出来るのだけは何としても阻止しないと。」

「……秀吉様も半兵衛様も過保護過ぎるんじゃあ……。」

「左近君。この時代には君のような軽い男が溢れているんだ。そんな輩から夢女君を守るのは当然だろう。」

「左近…貴様、恐れ多くも秀吉様と半兵衛様に口答えなど…。」

「すんません!ってか俺、何気に貶されてないっすか?」

「日頃の行いのたまものよ。」

「どういう意味っすか、刑部さん。」

「何にせよ、何か策を講じないとね。大谷くん、知恵を貸してくれるね?」

「あい、わかった。…そうよなぁ…そのまふらぁとやらを奪うか、相手を葬るのが一番手っ取り早いであろうなぁ。」

「ちょ、刑部さん!案が怖いっすよ!」

「葬るのであれば私に任せろ。骨のひとつも残さん。」

「三成様もその案に乗らないでくださいよ!」

「そうだね。三成君ならうまくやってくれそうだ。」

「半兵衛様も!?」

「うむ。任せたぞ、三成よ。」

「はっ!おまかせを!」

「秀吉様まで!」

「みんなで何の話ー?」

「夢女ちゃん!なんという間の悪さ!いや、何て言うか…逃げて……。」

「え、うち何かした?」

「いやー…夢女ちゃんっていうかまふらぁっていうか…」

「マフラー?何で左近がマフラーの事知ってんの?」

「夢女、それを渡す相手は誰だ。虚言は許さない。」

「え、どういう事?何で抜刀しそうな態勢なん!?刀無いけど。」

「ヒヒッ、三成に切られたくなければ素直に吐いた方が夢女の為になろ。」

「よくわからんけど…マフラーは刑部にあげようと思ってたんやけど…?」

「「「「「!!」」」」」

「この色、刑部に合うと思ってな。ほんまはもうちょい早く出来上がる予定やってんけど、長めにしてたら時間かかってもうてさぁ。」

「われに…か?」

「そう。どうかな?貰ってくれる?」

「あ、あぁ…。」

「良かったー。こうやってぐるぐる巻いて、後ろで結んだらリボンとか蝶っぽいかなって。ほら、やっぱこの色似合うー!良かったら使ってな。」

「あぁ…。礼を言う…。」

「へへ。じゃあうちはのんびりお風呂入ってこよっと。あー肩こった!」


「…………。」

「刑部。」

「吉継。」

「刑部さん……。」

「大谷君、これはどういうことかな。」

「…やれ、われは急に耳が遠くなった。」

「秀吉様、この者を残滅する許可を私に。」

「うむ。存分に暴れよ。」

「…完全に自分で墓穴掘っちゃったみたいっすね、刑部さん。」




 





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