寒い時は暖まろうよ


「寒い。早くあ家に帰ろう。…あれ、刑部?」

「夢女か。」

「偶然。こんなとこでどうしたん?病院帰り?」

「左様よ。夢女は遊び呆けた帰りか。」

「遊び呆けたって…まぁいいや。寒いしはよ帰ろ。」



「寒い寒いー!油断してた。手袋とマフラーしてきたら良かったー!マフラー貸してくれ!」

「断る。賢人の言葉を聞かぬぬしが悪い。」

「うぅ…はっ!あれは自販機!温かいの買おう!あ、刑部が好きなお茶もあるで。これでいいやんなー。うちはこれー。」

「われはまだ答えておらぬが。」

「飲むやろ?あー…あったけぇ。ほっぺたが温もる。刑部もやったろう。ほれ。」

「やめやれ。」

「えー…だってほら、冷たい!刑部もほっぺたひえひえやん!」

「ッ!」

「あったまれあったまれ。ぬくくない?」

「あぁ…。」

「あ、でもやり過ぎると火傷するから気を付けて。」

「……。」

プシュッ

「もう飲むん?」

「いつ飲もうとわれの勝手であろう。」

「まぁね。うちはいっつもポケットに入れてカイロ代わりにしてからやなー。手も温めたいし。」

「左様か。残念ながらわれはもう開けたゆえ出来ぬなぁ。」

「そうやなぁ。それやったら…はい、うちの缶持って。」

「?」

「で、刑部のポケット入れて。…温い?」

「…温いが、これではぬしが寒かろう?」

「大丈夫。うちも刑部のポケットに手突っ込むから。」

「ッ!?なっ!」

「ちょ、手抜かんといてよ。うちだけ刑部のポケットに手入れてたら不審すぎるやろ。」

「しかし…。」

「はい、この手はここ。」

「ッ!」

「へへ。もう逃がさへんでー。ほら、温いやろ?病院帰りに風邪ひくとか意味わからんからな。ぬくくしなな。」

「……はぁ。」

「え、溜め息!?そんなに嫌!?」

「……誰もそうは言っておらぬ。」

「良かった。…で、ついでにそのお茶ちょと頂戴。」

「………ぬしの分があるであろう。」

「残念ながらうちのはカイロになっているのです。」

「…………。」

「うちもお腹から暖まりたいよー!」

「………はぁ……ほれ。」

「やったー!ありがとう!あったかー……苦!何このお茶ッ、苦!渋!」

「ヒヒッ…ほれ、暖まりたいのであろ?遠慮せずもっと飲みやれ。」

「や、もうお腹いっぱいっす。……よくこんな苦いの飲めるな。」




 





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