次の日、約束の時間の30分前に駅に着いた。
遅刻して怒られるのだけは避けたかったからだ。
なのに。
「石田君!ごめんなさい!待たせちゃって…私、時間間違えてた!?」
「いや、まだ約束の30分前だ。」
腕時計を見ながら話す石田君。
デニムに白のストライプシャツに紺のカーディガン。
シンプルだけどよく似合っている。
もとがいいからだろうか。
思わずみとれていると、石田君が怪訝そうにこちらを見てくる。
「なんだ。」
「いや、私服もかっこいいなぁって思って。」
「なっ!?」
素直に思ったことを告げると石田君は眉間にシワを寄せてこちらを睨んできた。
恐い!
何か気にさわるような事を言ってしまったんだろうか。
謝ろうとすると石田君はぷいとそっぽを向いてしまった。
そんなに怒るの!?
「あの…」
石田君の顔を覗き込んで驚いた。
顔真っ赤…
目付きが鋭くて眉間にはシワがあるけど…真っ赤。
なんだろう。
可愛い。
「石田君…」
「さっさと行くぞ。」
私の言葉を遮ってさっさと歩き出す石田君。
その背中が昨日までと違い、少し近く感じた。
かれこれ二時間近く、いろんなお店を回った。
「い、石田君…そろそろ休憩しない?」
「そうだな。これを購入した後、休憩するか。」
そう言ってノートが沢山入った買い物カゴをレジに持って行く。
私の両手の紙袋にはノートマジックに筆と文房具が沢山。
かすが。
これ、デートちゃう。
ただの生徒会の備品の買い出しや。
心の中でそう呟き、デートだとドキドキしてたのが馬鹿みたいに思ってがっかりした。
…あれ、何で私残念がってるの?
私の好きな人は家康君だよ。
ちゃんと誤解を解かないと。
ふと棚に並ぶ商品を見ると、一本のシャーペンに目が止まった。
これ、家康君が持ってたやつの色違いだ。
それを手に取りまじまじと見る。
赤色に葵の葉の模様が入ったシャーペン。
家康君のは黄色だったなぁ。
色違い買っちゃおうかなとか考えていると、いつの間にか会計を済ませた石田君が後ろに立っていた。
「それが欲しいのか?」
シャーペンを見て一瞬眉根を寄せたように見えたが、それを取り上げてさっさとレジへと行ってしまった。
慌てて追いかけようとするが、狭い店内では荷物が邪魔だと入り口で紙袋を預かっていたのが仇となり、店内の奥にあるレジまで進むことができない。
入口でわたわたとしている間に会計を済ませたらしい石田君がその包みを私に渡してくる。
「そんな、悪いよ!貰えない!」
包みを返そうとするが受け取ろうとしてくれない。
「私がお嬢に渡したいだけだ。拒否は認めない。」
何てことをさらっと言うんだ。
上から目線だが。
「…ありがとう…」
素直に嬉しくて顔が綻ぶ。
「ふん。」
私から紙袋を奪うと、両手に全ての荷物を持ってさっさと店を出ていく石田君。
私は両手でプレゼントの袋を握り締めて彼の隣りへと駆けて行った。
いつの間にか辺りは暗くなり、時刻は夜の7時を回ったところだった。
危ないからと家まで送って貰った。
「わざわざありがとう。」
「構わない。」
結局、今日1日一緒にいたが始めの赤面以来、石田君の仏頂面以外を見ることは無かった。
楽しくなかったのかな?
ふと疑問に思った。
「石田君は、何で私と付き合うことにしたの?」
正直、石田君とは隣のクラスってだけで接点なんてほとんどない。
石田君は格好いいとか頭いいとかで有名だし、何より家康君の友達なので私は石田君を知っていた。
でも、石田君は?
ほとんど初対面の私の告白を何で受けたのだろうか。
「貴様が言ってきたからだろう。」
えっと…誰でも良かったって事なのかな?
モテてるのに意外と女の子に飢えているのか?
石田君って意外と遊び人!?
「石田君って…」
「何だ。」
真相を聞こうと思うがどう聞いても怒らせてしまう気がしてやめた。
「なんでもない。えっと…それじゃ、また明日学校でね。」
そう言って手を振って帰ろうとした時、おもむろに手を掴まれた。
「え、どうしたの?」
驚いて石田君を見ると、睨む目と目が合い、しばらく無言で見つめ合う。
「えっと…石田君?」
「…何でもない。また明日…学校で…。」
そう言って手を離して帰ってしまった。
昨日は感じていた恐怖は感じなくなっていた。
それとは違うドキドキが全身を埋めつくすようだった。
そして思い出す。
また話しそびれたと。
← →
間違いから始まる恋トップ
小説トップ
トップページ