知られてしまった


あれから数日が経った。
事態は変わることなく、むしろ一緒に下校したりと何気に仲良くやっているのだ。

食堂で食事を終わらせた後、先輩であるかすがに今度の期末試験の勉強を教えてもらいながら石田君の話をする。

「さっさと話をしないか。ずるずると石田と付き合うことになるぞ。」

「いやぁ最近はそれでもいいかなーって…」

家康君の事は好きだった。
でも石田君のことが頭から離れないし、思い出すとドキドキする。
これは恋なのだろうか。
それともつり橋効果や映画ジャイアンの法則で勘違いしてるだけなんだろうか。
正直よくわからない。
でも最近は仏頂面の奥の表情を見るのが楽しいと思う。
不器用なりの優しさとか。

「私は石田より徳川をすすめるがな。あいつといてお嬢が幸せになるとは思えない。」

「ちょっとかすが…」

まぁ以前の私ならかすがと同じことを思っただろうけど…

苦笑いを浮かべながら石田君に買って貰ったシャーペンを眺めて考える。

「お、夢野のそのシャーペン、ワシのと色違いじゃないか。」

急に聞こえた声の方に目をむけると家康君が爽やかな笑顔をこちらに向けていた。

「い、い、家康君っ!」

「ワシのは黄色なんだ。書きやすいしお気に入りでなぁ。」

急に表れた人物にあわあわと慌てていると、かすがが家康君に話しかけた。

「徳川、呑気にしているようだがテスト勉強はしなくていいのか。」

「いたいところをつくなぁ…まぁ何とかなるだろう。」

根拠のない自信と笑顔を見せる家康君。

「わ、私は自信ないからかすがに教えてもらってるんだよ。かすがは教えるの凄く上手いし。」

「そうなのか?うらやましいな。ワシも教えて欲しいものだ。」

「なら今日の放課後、図書室で勉強会をするか?部活も休みだし、私はかまわないが。」

「いいのか?ワシも丁度空いているし、助かる。」

「お嬢も来るだろう?」

「え、でも…」

今日は生徒会の仕事がないからと、石田君と一緒に帰る約束をしてたけど…

「お嬢が来ないなら中止だがな。」

「そうなのか!?夢野、何か用事があるのか?」

「…ううん、大丈夫。」

家康君に困ったような顔を向けられて断れなかった。
後で石田君に断りのメール入れておくことにした。









放課後になり図書室へと向かう。
中に入ると家康君が机にノートを広げて待っていた。

「あれ、かすがは?」

「まだみたいだな。」

「そっか…」

家康君の隣に座り、ノートとペンケースを取り出す。
勉強の準備をしてしばらく待つがなかなかかすがが来ない。
二人だけの空間にそわそわする。

「えっと、かすが遅いね!ちょっと電話してくる!」

たまらず廊下に出て電話をかけると数コールで電話にでた。

「かすが!ちょっと遅いよ!」

『すまない。部活の事で謙信様に呼ばれてな。すまないがあと10分程遅れる。』

「10分!?私、その間家康君と二人きりになるじゃない!」

『いいじゃないか。その間に相談でもして仲良くなればいいだろう。』

「相談って何をよ?」

『石田との事に決まってるだろ。間違って告白して付き合うことになって困ってるって。そのまま告白してまるく納めろ。』

「いや、だから私は今の状態が…」

『あ。』

「え?何?どうしたの?」

『いや、さっきのは…ちょっと待て!いし…ブツッ。ツー…ツー…』

急に切れた電話を見て頭を傾げる。
どうしたんだろう。
とりあえず、遅れる事を家康君に伝えるために図書室へと戻る。


「ごめん。上杉先生に呼ばれたみたいでまだ10分くらい遅れるって。」

「そうか。まぁ上杉先生ならしょうがないか。」

かすがが上杉先生大好きなのは学校内でも有名なので家康君も納得した。
かすがが来るまで自習でもしてようとペンケースからシャーペンを取り出す。

「あ、それ。ほら、これと色違い。」

家康君もシャーペンを取り出し私のシャーペンに並べて見せる。

「ほんとだ。」

本当は知ってたけど。

「これ、石田君に買ってもらって…」

「三成に?」

家康君は目を丸くして心底意外そうな顔をした。

「そう。石田君と付き合ってて…」

「三成と?そうか!」

家康君はさらに驚いた顔をした後、嬉しそうな笑顔をしていた。
その笑顔につられて私も笑顔を返した。


突然バタンと大きな音が図書室に響いた。
驚いて音の方を見ると扉の所に意外な人物が立っていた。

「石田君…?」

今まで見たこと無いようなどす黒いオーラを纏った石田君がこちらへ向かって歩いてくる。

「どうした、三成。」

私達の目の前まで来た石田君は家康君を睨んだ後、私を睨む。

「これはどういう事だ。」

石田君のそんな顔を見たことなかった。
恐くて動けない。

「え…あの…」

何か言わなければ。
そう思うが何も浮かばない。

「お嬢…貴様は、私を裏切ったのだな。」

そう言って踵を返して図書室を出て行く石田君。
チラリと見えたその目は、今まで見たこと無い程悲しそうに感じた。

「石田君!待って!」

慌てて石田君を追いかけるがなかなか追い付けない。
やっとのことで階段の踊り場で追い付き、石田君の腕を掴む。

「待って!何でそんなに怒ってるの?裏切るって?」

勉強会の事はメールで連絡したはずだし…

わけがわからなかった。

「貴様が好きなのは家康なのだろう。」

「え…なんで…」

頭が真っ白になった。
何で知ってるの?
腕を掴む手が汗ばむ。

「上杉の忍が電話で話しているのを聞いた。」

さっきの電話を……そういうことか。

「それは…」

「あの文は間違いだったのだな。」

ズキリと心が痛む。

「ごめんなさい。でも…」

「ずっと、私一人浮かれていたのだな。」

「え…」

「もう私に構うな。家康のもとへ去れ。」

腕を掴む私の手を振りほどいて階段を降りて行く。
追いかけたいのに、訂正したいのに足が動かなかった。








どれくらいその場に立ち尽くして居ただろう、ふとポケットに入れていたケータイが鳴った。

「…はい。」

『お嬢!今どこにいるんだ!すまない!石田が…』

「かすが…」

『お嬢!?石田に会ったのか!?』

「うん…フラれちゃった。……今日はもう帰るね。ちょっと一人になりたい。ごめん。」

『お嬢!?』

通話を終了させ、そのまま電源を切った。




 





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