次の日、お昼頃に学校へと向かった。
泣き腫らした目を少しでも落ち着けようとしていたらこんな時間になってしまった。
本当は学校に行きたくなかったが、テスト前だし仕方ないと重い足取りで校門をくぐる。
「お嬢!」
丁度昼休みに入ったばかりで生徒でごったがえしている廊下を歩いていると、私を見つけたかすがに名前を呼ばれ立ち止まる。
「大丈夫か?電話も繋がらないし、心配していたんだ。」
「ごめんね、ありがとう。大丈夫。」
無理に笑顔を作るが長い付き合いのかすがは騙せないだろうなぁと思う。
「すまない。私が余計なことを言ったばかりに…」
珍しくしゅんとしているかすがの頭をぽんぽんと撫でる。
「ううん、私が悪いの。…石田君を傷つけちゃった。」
思い出して涙が出そうになるが、かすがの前で泣くと心配させるのは目に見えている。
急いでるからとかずがが呼び止めるのを無視して階段をかけ上がり、自分のクラスへ向かおうと角を曲がったところで誰かとぶつかってしまった。
「いたっ」
「あ、すまん!」
腕を擦りながら視線を上げると、ぶつかった相手は家康君だった。
「夢野!昨日は大丈夫だったか?あの後戻って来ないし…荷物はワシが預かっているから、朝クラスに届けに行ったら来てないって言われるし…」
家康君を見ていると昨日の事を思い出して泣けてくる。
悪いのは自分なのに悲しくて空しくて自己嫌悪でぐるぐると負の感情が渦巻く。
「え、夢野!?どうしたんだ!?」
「い、家康君…ご…めん…何でも…ない…」
泣き止もうと制服の袖で涙を拭うが、後から後から涙がこぼれてくる。
「すまん!ワシ、何かしたか?」
優しく私の肩に両手を置いて問いかけてくる。
そんな優しさを受ける資格なんて私には無いのに。
「ちがっ…ひっぐ…石田…君…に…ふ、フラれ…ひっく…」
「三成…?」
家康君が心配そうに顔を覗き込んで来た時、
「ィィイエェヤァスゥゥゥゥ!!!」
聞き覚えのある叫び声がどこからか聞こえてきたと思ったら、肩に置かれた家康君の手を振り払い、目の前に見覚えのある後ろ姿が立ちふさがった。
石田君…
「家康!貴様、お嬢に何をした!」
「急に何だ三成。ワシはなにも…」
「ほざけ!ならば何故お嬢が泣いている!私が身を引いたのはお嬢を泣かせるためではない!」
「い、石田君、落ち着いて。家康君のせいじゃないの。」
呆気にとられていたが、慌てて誤解を解こうと石田君に話しかけるが、振り返った石田君は昨日と同じ様な目をしていた。
「貴様は…家康を庇うのだな。」
「違う!そうじゃないの!話を聞いて。」
「話なら昨日聞いた。お嬢が好いているのは私ではなく家康だと。」
「えっ!?」
突然の話に驚く家康君を無視して話を進める。
「それは…最初はそうだったの。手紙を間違えて渡してしまって…石田君恐いし、なかなか本当の事言えなくて…でも、不器用だけど優しいところとか、本当は表情豊かなとことか…いろんなこと知ってどんどん惹かれて、気付いたら誰よりも一番気になって、一緒にいるのが幸せだったの……だから、昨日石田君にフラれて…それで…」
いろんな想いがぐちゃぐちゃと塊になってうまく言葉にできないのが歯がゆい。
必死に話していると感情が溢れて、止まっていた涙と共に再び溢れ出す。
「や…やだよぅ……私…石田君じゃ…なきゃ…っ…」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら何とか思いを伝えようとする。
「ごめん…なさいっ……わ、私…石田君がっ…大好きなんですっ…捨てないでぇ…うぇえ…」
「…お嬢…私は…」
「いやー、良かったなぁ、三成!いろいろあったみたいだがまるく収まったようじゃないか!」
石田君の言葉を遮って家康君が嬉しそうに話し始める。
「貴様…」
石田君は家康君の方をキッと睨む。
うん。空気読んで欲しいよね。
しかし、そんな私達の空気を読まず話を続ける家康君。
「昨日、夢野から三成と恋仲だと聞いてワシも嬉しかったんだぞ。三成は前から夢野の事を好いていたからなぁ。」
「なっ、家康ッ!貴様!余計なことを…ッ!」
「え?」
石田君を見ると眉間のシワがいつもの2倍になっていた。
でもそれ以上に気になるのは顔が真っ赤な事。
「いつも夢野の事見てたもんなぁ。わざわざ夢野の教室の前でワシを待ち伏せしたり。」
「な、何故貴様がそれを知っている!?」
「長い付き合いだ。それくらいわかるぞ。」
はははと爽やかな笑顔を向ける家康君。
それに比例するように石田君の周りにどす黒いオーラが増していく。
「ィィィイエェヤァスゥゥゥゥ!貴様!今すぐ頭を垂れろ!斬滅してやる!!」
「ははは……ただかーつ!」
笑顔で叫びながら窓の方へ走る家康君。
それを追いかける石田君。
「逃げるのか!イエェヤァスゥゥゥゥ!!!」
いつも通り忠勝君が飛んできて窓から飛び降りた彼を乗せて何処かへ飛んで行った。
「チッ!」
「あの…石田君…。」
窓から家康君が飛びさった方を睨んでいた石田君が振り返る。
「あの…その……本当にごめんなさい。でも、さっきの話は本心で……でも石田君が嫌なら…」
だんだん声が小さくなる。
それでもなんとか話そうとしていると、石田君にぎゅっと手を握られ、顔をあげる。
「私は…家康が言った様に以前からお嬢の事を気にかけていた。あの文を貰った時、嬉しかった。しかしその分、真実を知ったときは絶望した。」
「ごめんなさい…」
「だが、お嬢の気持ちが変わったと言うのであれば、また先刻のように共にいたいと思う。」
「じゃあ…」
「私と共に居ろ。拒否は認めない。」
そう言って私を強く抱き締めてくれる。
もう一生味わえないと思っていた、その腕の力強さと温かさがとても嬉しい。
私も彼の背中に両手を伸ばし、強く抱き締め返した。
ふと視界の端で何かが動く気配を感じ、その方を見ると、満面の笑みを浮かべた家康君と表情のわからない忠勝君が窓越しにこっちを見ていた。
私の中で家康君の称号が好きだった人から空気クラッシャーに変わった。
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