「小学生か、テメェは。」
そう言って白飯に小豆をぶっかけた物を食べながら私を見た。
話を聞いてもらおうとスナックお登勢に友人の銀さんを呼び出したのだが、話を聞き終わった後の第一声がこれだ。
「どういう意味だ。」
「どっからどう聞いてもテメェはそいつの事好きだろう。何がわかんねぇだよ。まるわかりだよ。猿でもわかるよ。」
「なっ!私があんなゴリラを好きだと言うのか!?」
「ゴリラ?」
「あ、いや…なんでもない。」
私が近藤さんの事を?
あんな馬鹿だし、ゴリラだし、ストーカー野郎だし、変態だし、おっさんだし、馬鹿正直だし、強いし、優しいし、真っ直ぐだし、いつも私を気遣ってくれるし、真面目な顔もするし、笑うと意外とかわいいし…
否定の言葉を並べようとしても思い浮かぶのは近藤さんの笑顔だった。
私は近藤さんが好き。
今まで訳のわからなかった想いがすとんと収まった気がした。
「そうか、私、好きになっちゃったんだ。」
言葉にすると余計に好きという感情が大きくなる気がした。
それと同時にもやもやと胸が重くなる。
「でも…その人好きな人いるんだよねー…。」
「ふーん、でも恋人同士ってわけじゃねぇんだろ?だったらまだ望みはあるだろ。告っちまえよ。」
「…いや、潜入するために最初に恋文渡してんだよね。そういえばそん時にフラれてたわ。」
好きだと自覚した時にはもうフラれてたとか。
ははと渇いた笑いをもらした。
「何言ってんだ。テメェはまだ何も告白してねぇだろ。」
「え?」
「そいつに渡した恋文ってぇのは適当な言葉並べただけのただの文章だろ。テメェの気持ちも想いも何一つ相手に伝えてねぇじゃねぇか。好きなヤツがいようがいまいが想いを伝えられて悪い気するヤツなんか居ねぇだろ。テメェも女なら当たって砕けてこいよ。らしくねぇぞ。」
目の前が晴れた気がした。
私は近藤さんに何一つ伝えてない。
私の想いを伝えたい。
そう思うといてもたってもいられなくなり、カウンターにお金を置いて立ち上がった。
「おい、どこ行くんだ。」
「屯所!告白してくる!ありがとう、銀さん!」
「そっか。……え、屯所?…屯所のゴリラ…ってまさかッ!ちょ、お嬢ちゃんんんん!?」
お店を出るときに銀さんが何か叫んでいた気がするけどそんな事はどうでもよかった。
早く近藤さんに会いたい。それしか考えられなかった。
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