ふたりの体温

※朝ちゅんなので気持ちR15
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一気に押し寄せて、一気に引いていく。
それはまるで力強い波のようだった、と私は思う。
今は荒い息を整えた後、ぴたりと体をくっつけて、その後の凪いだ時間を過ごしていた。

妖怪に体温はない。当然ぬらりひょんにもそれは言えることなのに、触れあう肌に温かさを感じていた。それは私の体温が移ったからなのか、それとも、もともとぬらりひょんの体質なのか。気だるさに包まれている今の私には、どちらでもいいことだ。


「大丈夫か」
「…はい」


低くて、少し掠れたぬらりひょんの声。私の声も掠れていた。


「無理をさせたな」


先程までの行為に気恥ずかしくなった私は、思わず彼の腕に顔を隠すように額を押し付けた。一応「無理はしてない」ということも伝えるために、グリグリと額を動かしておいたが。


「疲れたか」
「いえ…あ、でも少し」
「どっちだ」


小さく笑う気配がする。この人はこんな風に笑う人だっただろうか。
何だか大人の余裕を見せつけられたような気もして、ますます恥ずかしい。


「七海」


ぬらりひょんは私の頭を二度ほど撫でると、ふいに私の名前を呼んで抱き寄せた。ただ抱き寄せられただけで、彼は何も言わない。ただ呼びたかっただけなのかもしれない。
どきりとした心臓は、すぐに安心感にゆったりと脈打ち始めていた。頬に触れる銀髪が、くすぐったかった。

そういえば、ぬらりひょんの髪の毛に触れるのは初めてだ。

思わず手のひらに乗せてみれば、それはさらさらと流れていった。私の髪の毛よりもずっと艶やかで、綺麗な色をしている。


「どうした?」
「綺麗な、髪だなあって」


くるくると指に巻き付ける。離せば絡むことなくすぐに元の形に戻って、さらりと掌から溢れていった。


「長くて綺麗です。うらやましい」
「そうか?」
「はい。女子の憧れです」


私は徐に体を少し反転させると、再び彼の髪を取った。ぬらりひょんの視線が私の胸元にきたが、先程までの羞恥心はもうどこかへ飛んでいた。
取った髪の毛を3つの束に別けてゆっくり編んでいく。


「何をしている」
「みつあみです」


さらさらしすぎて、少し編みにくい。けれど編み上げれば、思った通り綺麗なみつあみになった。


「んーやっぱり綺麗ですね!いいなあ」
「私にはよくわからん」


呆れたように、ぬらりひょんはため息をつく。
わからなくていいんです。知っているのは私だけで。それを伝えたら、彼はどんな顔をするだろう。私の小さな独占欲を、先程のように笑ってくれるのだろうか。

編み上げたみつあみの先を止めていた指を離せば、再び彼の髪の毛はシーツの上へと溢れていった。見計らったようにぬらりひょんの手が私の首筋を撫でる。くすぐったくて気持ちいい。そして頭を引き寄せられて、触れるだけのキスをした。

唇が離れると、無意識に小さな欠伸が出た。
やはり疲労感で、体が怠い。


「眠くなったか」
「はい」


私はもう一度ぬらりひょんの横に体を横たえると、彼の逞しい腕に頬をくっつけた。やっぱり温かい気がする。とても安心する温度。私だけが知ってる、ぬらりひょんの体温だ。


「少し眠るといい」
「はい」


目を閉じると、ぬらりひょんはそっと落ちかけたシーツをかけ直してくれた。


「おやすみ、七海」


おやすみなさい、ぬらりひょんさん。

すぐに夢の世界がやってきて、彼が前髪を撫でてくれたような気がしたけれど、次の瞬間にはもう、覚えていなかった。