HELLO!(1/2)
学校が終わり、バイト先に向かおうとしていたときのことだ。
突然の轟音を伴って、歩いている私の目の前に何かが不時着した。「な、何…」ぷすぷす、と土煙が立ち上り、私まで土埃に噎せてしまう。ゲホゲホと咳をしながら目を凝らしてみれば、その中に見えたのは黄色い塊だった。いや、足が生えてるから塊ではない。立派な動物である。
黄色いボディを持つ「それ」は、足を二・三度動かすとぴょんと跳ねあがった。ピンと伸びた耳は兎に似ているが、
「イナホの奴…許さないダニ」と呟きながら、90度以上ずれた位置を直しているので、もしかしたらただのヘルメットの飾りなのかもしれない。
黄色いウサギの恰好をしたそれは、未だ私に気づいておらず─と言っても、私自身驚きすぎて息を殺していたのだが─。
「ミーの恐ろしさを思い知らせてやるダニ…!」と何やら不穏なことを呟いている。
パタパタと埃を払う際に見えたのは、紫色の尻尾。揺らめく炎のような尻尾をみて、今更ながら、ああ、この子も妖怪なのだと私はそのとき悟ったのだった。
よくよく考えてみれば、喋る動物なんて可笑しいのだから、もっと早く気づいても良いだろうに。
しかし、すっかり呆気に取られていた私は、バイトに向かっている途中だということも忘れて、思わずその一連を眺めてしまっていた。ふと黄色い兎ヘルメットの妖怪と目が合う。数秒時間が止まった。
「……」
「……」
「………」
「……えっと…大丈夫?」
その沈黙に先に耐えられなくなったのは私の方だった。黄色い兎ヘルメットは、私を見つめ返すだけで何の反応もしない。
驚かせてしまったのだろうか。まあ、確かに私は無駄に妖怪が見えてしまう体質だけれども。
「おーい。兎ヘルメットくん?」
視線を合わせようと、しゃがんでヒラヒラ手を振ってみる。
そしてまた数秒の沈黙のあと。「みっミーが見えるダニ?!?!」先程の轟音と同じ位大きな声が、その場に響き渡ったのだった。
これが私と、私が初めて出会うメリケン妖怪─USAピョンだ─との出会いである。
→