姉の初恋(1/3)

「七海って好きな人いないの〜?」
「えっ…何、急に…」
「だって気になるじゃない〜?ねえ、女郎蜘蛛!」
「ええ!ものすっっごぉく気になるわあ!」


とある昼下がりのことだ。その日私はえんらえんらと女郎蜘蛛で、いわゆる女子会というものを開催していた。皆が持ち寄ったお菓子や飲み物を囲んで、この平釜平原の片隅に腰を下ろしている。でも始まって数分で、いきなり恋バナになるとは。やはり妖怪も人間も、「そういう話」は好きなんだなあ。

いや、感慨深く思っているところではない。今彼女たち(一人は彼)の目の先は、私に向いているのだった。


「えっと……いません」
「はい、ダウトーー!絶対いるわ!この子絶対好きな人いるわ!」


びしぃっと指を突きつけられて、思わず後ずさる。いや、本当にいないから!


「うふふ、吐いちゃいなさいよ〜」
「いやいやいや、いないの。ほんっとーうにいないの!」
「大丈夫よ、誰にも言わないから」


これほど信用のない「大丈夫」はあるだろか。
うりうり、なんて肘でつつかれて、私は小さくなるばかり。あああ、これだから女子は怖いんだ!


「さっさと吐いちゃった方が楽よ?言っちゃいなさい、いや、言え!」
「ほらほら〜」
「ほんっっとにいないの!ほんと!閻魔大王様に誓ってもいい!」


ぶんぶん、と胸の前で手を振る私を見てこれは本当かもと思ったのか、「ええ〜そうなの?」と女郎蜘蛛が尋問の手を緩めた。「つまらないわね〜」そもそも仮に私に好きな人がいたとして、面白い話など何もない。


「じゃーあ、初恋は?さすがにそれはあるでしょ?」


しかしつまらなそうな顔をしていた女郎蜘蛛だったが、思い付いたようにポンと手を叩いた。確かに女郎蜘蛛のいうとおり、初恋はすでに経験済みである。でもそれこそ私の初恋なんて小学生の時で、まだ妖怪だって見えない頃だったのだ。そんなお茶請けにもならない話、したところで場の繋ぎにもならないのに。


「あらいいわね〜その話詳しく聞きたいわ〜」
「ええー…私の話なんて面白くないよ」
「いいからいいから!話してみなさいよ!」


相変わらずこの女性陣は強引だ。そんなところも彼女たちの魅力だとは思うが、これは話さなければきっと帰してもらえないんだろう。

はあ、と一つため息をついて二人を見れば、期待に満ちた目が私を見ていた。


「じゃあ、話すけど…」
「うんうん!いつなの?!」
「何歳の頃なのかしら〜?」


目を瞑れば、鮮やかに思い出せる。
あれは私が10歳の頃。暑い夏の日だった。