寂しがりやのうさぎ(2/2)

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「お邪魔します、ダニ!」
「はい、どうぞ〜」

自室へと案内すると、USAピョンは礼儀正しく頭を下げた。メリケン妖怪なのに、お辞儀を知っているんだなあとぼんやり思う。我が家に住む妖怪よりも、よっぽど礼儀正しい。ジバニャンなんて気づけば部屋にいるもの。

「適当に寛いでいいよ。荷物は…そうだなあ。あの辺りに置いておこうか」
「わかったダニ!」

クローゼットの前を指差せば、彼は心得たとばかりに頷いた。そしてそこで荷物をほどくと、中から取り出したのは、ロケット。しかも1つではない。5体ある。
喧嘩して家出したUSAピョンが持ってくるくらいなのだから、それは彼にとってよっぽど大事なものなのだろう。

私の予想は当たっていたようで、「かっこいいロケットだね」と言えば、「そうダニ?!これはヒューリー博士が初めて開発したロケットで〜」と語り出した。内容は難しいので割愛だが、USAピョンはこの手の話については随分と博識なようであった。

「USAピョンって物知りだねえ」
「そ、そんなことないダニよ?!」

USAピョンはくねくねと体を動かしながら、私から目をそらす。喜んでる。それを必死に隠そうとするUSAピョンかわいい。自他ともに小動物大好きな私は、早くもここで沸点に達した。

勢いよくUSAピョンを抱き上げて、ぎゅーっと腕のなかに閉じ込める。「ダニ?ちょちょちょ七海?!?!」「USAピョンかーわーいーいー!!」うりうりと頬をうさ耳のヘルメットに寄せれば、またもや照れ隠しか激しく抵抗する。「やめっちょ、七海…!」「はああ〜うさぎ最高か…」猫もほにょにょお化けもいいけれど、うさぎも大変よろしい。ずっと抱っこできそうだ。しばらくUSAピョンは何とか私の腕から逃れようとしていたけれど、そのうち諦めたようで、いつの間にか大人しくなっていた。けれども私の手が彼の頭を滑っても、体は固いまま。おまけに静かである。

「あれ、ごめん。ナデナデ嫌いだった?」

顔を覗きこめば、ふいと視線を外される。「七海は…その、ジバニャンたちにもこういうことしてるダニ?」ヘルメットだから、表情がよくわからない。ただその声色は何だか悲しげだ。

「ん?まあジバニャンはよく抱っこしてるかなあ」

ウィスパーはさすがにしないけれど。そう言えば、「そう、ダニか…」とUSAピョンが呟く。その後黙りこんでしまったので、顔を覗きこんだけれど、再び視線を外されてしまった。

「USAピョン?」

私何かまずいこと言ったかな。私は抱き締めていた体を一度離すと、彼を目線の高さまで持ち上げた。

「二?!何するダニ?!」
「だってUSAピョンの機嫌が悪くなったから」
「べっ別に悪くなってないダニよ!」
「ええ〜今明らかに機嫌悪かったよね?」

私の問いに、俯くUSAピョン。

「別に…ジバニャンたちがうらやましくなっただなんて思ってないダニ」
「んん??」
「べっ別にミーは!!うらやましいだなんて!思ってないダニ!断じてない!ダニ!」
「お、おう…」

そこまで力強く否定しなくても。逆効果である。
ジバニャンたちがうらやましい。それがUSAピョンの本音なのだろう。
こうして抱っこして、なでなでして、くっついて。
私と一緒に遊ぶことがうらやましいと。彼はそう思っていてくれているようだ。

USAピョンと一緒に住んでいる人は、あまりスキンシップしない人なのかな。
うさぎは寂しがり屋なんだっけ。喧嘩して、家出してしまった今、きっと寂しさは極限状態なのだ。
それなら私が代わりに、彼の寂しさを埋めてあげればいい。
素直になれない彼を、素直にさせてあげよう。

未だに顔をそむけるUSAピョンを一度下して、私は彼の両頬を私の両手で包んだ。
「ダニ!?」驚いた様子の瞳と目があう。青くて、透き通っている。宇宙みたいだ。

「USAピョン」
「な、な、何…」

うろたえる彼の、鼻先。
ちいさくキスを落とす。

USAピョンの匂い。ちょっと不思議な匂い。

「んな…!??!え、あ!?七海!?!?!?」
「うわあ、真っ赤」
「な、な、なにするダニ!?」
「何って…」

スキンシップ?
私は日ごろジバニャンとこうやって遊んでいる。コマさんやフユニャンにもしかり。
やっぱりさすがにウィスパーにはしないけれど。

口をぱくぱくさせて、声にならない声を出すUSAピョン。
照れちゃって。かわいいなあ。

「へ、変態!み、ミーのはな、鼻に…!」
「ちょ、待って待って。変態じゃないってば。私いつもこうやって遊んでるんだから」
「遊んで…!?」
「そうそう。いやだった?」

我ながらずるい聞き方をしてしまった。
けれどUSAピョンは口を一度閉じると、「いやじゃ…ないダニ。むしろ…」と小さくいった。最後のほうは聞き取れなかったけれど、怒ってはいないようだ。
再び小さな彼を抱きしめる。相変わらず固い体だけれど、少しずつ慣れていってくれればいい。
家出が終わるころには、寂しさもなくなっているはずだ。

「今日はいっぱい甘えていくといいよ。寂しがり屋のうさぎさん」

もう一つおまけに、ヘルメットの耳の部分に口づけて、私は彼の頭を撫でた。
以前よりも近づいた距離が、私は嬉しかった。




後日、うさぎは寂しがり屋ではないし、彼がどうしてうらやましいと言ったのか、その真意を知ることになるのだけど、それはまた別のお話である。