私の望みは生きる事だった。
あと余命1年と宣告された私は勤めていたサイバーライフ社からアンドロイドを製作する技術を盗んで辞職した。これは自分でアンドロイドを作るために必要だったからだ。
資金集めの為に莫大な金が必要だった私は裏の世界に入ってレッドアイスを売りサイバーライフ社で培った知識を元に自分の脳のデータをアンドロイドに移す技術の研究を始めた。
けれど何度繰り返しても失敗だった。
アンドロイドの生みの親であるイライジャ・カムスキーのアンドロイドの技術データを元に研究しているけれど自分の自我や記憶をデータ化する事は可能でもアンドロイドにアップロードしようとすると"何か"のプログラムによってエラーが発生し弾かれるのだ。
その"何か"のプログラムは削除不可能で仕組みがどうなっているのか調べても分からない。
焦りは次第に私の思考力を奪っていき身体はどんどん病で弱っていく。
その"何か"のプログラムが削除不可能ならそれを掻い潜るコンピューターウィルスを作る研究を進めて何度も私そっくりなアンドロイドを解体し組み立てては機動、自分自身のデータのアップロードを繰り返す。
そして何度目かの失敗をして私は自分の作ったアンドロイドの異変に気が付いた。
でもその時には既に時は遅くアンドロイドは護身用に側に置いてあった私の銃を奪うとこちらに向ける。
私そっくりなアンドロイドは私を睨み付けて憎しみの感情を向けていた。
研究に打ち込んでいて世間に疎くなってはいたけれど風の噂で機械であるはずのアンドロイドが意思を持ってデモを起こしたと聞いた。
得体の知れない"何か"はこれだったのか。
イライジャ・カムスキーが何を思ってこのようなプログラムを作ったのかは私には分からない。
このプログラムを作り変えるには私の限られた時間では無理だろう。
遠くで複数の足音が聞こえた私はもう駄目なのだと悟った。
裏の世界にいる限り警察に追われるのは必至でそれでも大金が必要だった私はこの1年保てばそれでいいと思っていた。
考えが甘かった。
この技術は"命"を作りその命あるものに"私"が入り込む隙なんてなかったのだ。
今まで私は何をしていたんだろう。
諦めと共にもうこれで終わりなのだと私そっくりのアンドロイドが突き付けた銃を自分の顎に当てると私は迷わずその引き金を引いた。
アンドロイドは私の血を浴びて驚いた表情をしていた。
死ぬ瞬間は一瞬だと言うけれどそれはスローモーションのように見えて自分の一生が走馬灯のように流れる。
スラム暮らしだった私の父親と母親は暴漢に襲われ小さい頃に私の目の前で殺された。その後は施設で育ち勉学に励んだお陰でサイバーライフ社で働くようになったけれどそこから余命1年の宣告。
"自分"が失敗したなら代わりを作ればいい。そうして"私"を作ったけどソレは私に似た何かにしかならなかった。
結局私は私でしかなくて私に変わって私の人生を誰かが歩む事なんて出来ない。
そんな事に今更気付くなんて馬鹿みたいだ。
私の人生はこれで終わり。
目の前のアンドロイドは呆然としていて私はそのまま視界が完全に暗転した。