警察学校組でなんちゃってホラー@

体を揺すられて、遠くで声が聞こえる。ゆっくりと目を開けると諸伏さんが安心したように笑う。「良かった。気分はどう?どこか痛いとことか、無い?」と尋ねられて、ようやく自分が諸伏さんに抱えられるような姿勢だったことに気付いた。

「す、すみません…!」と体を起こして辺りを見回す。ここは一体どこですか。「え、」と漏れた声に諸伏さんが苦笑いをして「まあ、そうなるよな」と呟く。「俺たちもよく分かってないんだ」と肩を竦めた諸伏さんに「俺たち?」と首を傾げれば「ゼロたちもいるんだよ。今外を見に行ってくれてるんだ」と返された。

なるほど…全然分からない。きょろきょろと辺りを見回す私に「ここがどこかの病院ってことは分かってるんだけどな。窓の外も真っ暗で何も分からなくてさ」と諸伏さんがそっと病室のカーテンを開けると真っ黒な壁がそこにあるようで、一切奥行が感じられなかった。

ぞわりと立った鳥肌を押さえるように腕を擦る。薄暗い部屋の中にどんよりと濁った空気が流れる。生温い風が頬を撫でる感覚が気持ち悪くて落ち着かない。「大丈夫。俺が一緒にいるから」と頭を撫でられて小さく息を吐く。

「ちょっとだけ、服掴んでてもいいですか」と声をかければ、きょとりと目を瞬かせた諸伏さんが「勿論。なんなら手繋いでてもいいよ」と笑ってくれたので心置き無く甘えさせてもらう。ぎゅっと手を握れば「大丈夫大丈夫」と頭をぽんぽんと撫でられる。

子供扱いをされているような気がしないでも無いけれど、怖いものは怖い。恐怖に耐えるように諸伏さんの手をぎゅううっと握り締めて息を潜めた。その瞬間、ガタンッ!と大きな音がして、肩が跳ねる。ついでに「っわぁ!?」と声が出てしまって慌てて口を押さえた。

諸伏さんの手、と言うより腕にしがみ付いて目をぎゅっと瞑る。やだやだ、ほんとにやだ。私を守るようにぎゅっと抱き寄せてくれた諸伏さんに縋り付いて身を固めていれば、ガラッと音がして部屋の扉が開く。

「……何だ、ゼロたちか」と安心したような諸伏さんの声に恐る恐る顔を上げると見慣れた降谷さんたちの姿があって、ぽろぽろと涙が出てきた。「悪い。驚かせたな」と困った顔で私の頭を撫でた降谷さんに「び、びっくり…っした、だけです…っ、」と返していれば、後ろからひょこりと萩原さんが顔を出す。

「びっくりさせてごめんね」と優しく抱き締められて背中をとんとん、と撫でられて唸りながらその胸に縋り付く。「で?何か分かった?」と尋ねた諸伏さんに「いや、それがな…」と伊達さんが言葉に詰まる。

「にわかには信じがたいんだが…ひとまず、萩原と松田の言い分を聞いてくれ」と降谷さんが二人を見る。その視線に釣られるように私と伊達さんと諸伏さんの視線も二人に向く。

「いや、確証はねぇんだが…あまりにも似すぎてんだ」と後頭部をガリガリと掻いた松田さんに「似すぎてる?」と私が首を傾げる。「昔、俺と陣平ちゃんがやってたゲームがあるんだけど…それに出てくるステージにそっくりなんだよ」と眉間に皺を寄せながら萩原が言う。

「ゲームって…そんなこと有り得るのか?」と怪訝な顔をする諸伏さんに「俺たちもそう思ったんだが…色々と不可解なことが多くてな」と伊達さんが言う。「一つ目は、外の様子が伺えないのはこの部屋だけじゃなかったこと」と降谷さんがカーテンをがばりと開ける。

ちょっと何か見えたらどうするんですか!突然の行動にピッと肩を跳ねさせて萩原さんにしがみつけば苦笑いをしながら背中を撫でてくれる。萩原さんのワイシャツの胸元は私が握り締めすぎてしわくちゃになっている。本当にごめんなさい。

「二つ目は、出口はあるのに扉が開かないこと」と降谷さんが苦虫を噛み潰したような顔をする。「鍵がかかってる、とかじゃなくて?」と諸伏さんが首を傾げると「よくあるガラスの扉だぞ。ゴリラが殴って開かねぇ訳ねぇだろ」と松田さんが鼻で笑う。

そのゴリラって誰のことですか、と思っていれば「お前なぁ…」と降谷さんがジト目で松田さんを見る。「降谷さんがごりら…」と小さく呟けば「ぶはっ…名前ちゃん、ちっちゃい声で言わないで」と萩原さんが私を抱えながらぷるぷる笑い出す。

そんな私と萩原さんを見た降谷さんがわざとらしく咳払いをするからピシッと背筋を伸ばす。ふざけてないです、ごめんなさい。「松田は後で殴るとして、」「何でだよ」「殴ろうが蹴ろうが物をぶつけようが、何をしても傷一つ付かなかった。これだけ廃れた病院にも関わらず、だ」と松田さんをギロリと睨んだ降谷さんが淡々と話す。

確かに変かもしれないとふんふん頷いていれば「……確かに、不自然だな」と諸伏さんも納得するように頷いていた。「そして三つ目、恐らくこの病院には人では無いモノがいること」と言い切った降谷さんに「え…?」と声が出た。

ど、どういう…というか、何を言ってるの。疑問を抱いたのは諸伏さんも同じだったようで「ちょっと待て。どういう意味だよ、それ。そんなゲームみたいな…」と途中まで話して、ハッとしたように言葉を詰まらせた。

「まさか…」と諸伏さんがそのまま視線を松田さんと萩原さんに向ければ「そのまさかだ」と松田さんがため息を吐く。「陣平ちゃんとも確認したんだけど、病院内の構造がゲームに出てきてたマップと同じなんだよね。あとパーティーのメンバー構成もゲームと同じ」と萩原さんが険しい顔で私を抱き締める手にぎゅっと力を込める。

「男5女1、全員で脱出できればSランク、人数が欠ければ欠けた分減点されてランクが下がるシステムだった」と言う松田さんの言葉にひゅっと息を飲む。「欠けたらって、それくらい危ないってことですか…?」と震える声で呟けば「……ゲームの通りなら、な」と松田さんが苦い顔で返してくる。

流れてしまった微妙な沈黙を遮るように「その話があったからな。ひとまず戻ってそのゲームがどんなゲームだったかを共有しようってことで戻ってきたんだ」と伊達さんが声を上げてくれて、降谷さんからの質問に二人が答える形で話が始まる。何となく嫌な予感がしてごくりと唾を飲み込んだ。
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