イケメンの友人はイケメンだった。テレビで見るよりカッコイイ、みたいなセリフをよく耳にするけれど本当だったんだ。ぽかんとしながら向かいに座る二人を見つめていれば、二人が首を傾げる。「あっ、ごめんなさい…すごい、綺麗だと思って…」とバカ正直に謝ってから「…あ、いや、違いますよね!?そういう事じゃないですよね…!不躾に見ちゃってすいません…!」とわたわたしながら謝れば隣の萩原さんがくすくす笑い出す。
「見惚れちゃったの?俺の時はそんなじゃなかったのに?」と唇を尖らせて不満ですと言わんばかりの顔をする萩原さんに「は、萩原さんのこともイケメンだなって思ってましたよ…」と熱くなった顔を隠すように俯きながら答えれば、今度は反対隣にいた松田さんが「んじゃ俺は?」と片肘を付きながら聞いてくるから「〜〜ッ松田さんもカッコイイですってばぁ…!」と耐えきれずに両手で顔を覆う。
な、何なのこの人たち…!と思っていれば、向かいの席から咳払いが飛んでくる。「話、始めてもいいか?」と静かな声にぴりっと空気が張り詰めて自然と背筋が伸びる。「単刀直入に言おう。君は、どこまで知っている?」と私を見つめた降谷さんの言っている意味が分からずに首を傾げる。
「ど、どこまでって…」と返事に困っていれば「君は俺が死ぬ瞬間を見たんだよな?」と諸伏さんが横から口を挟む。その問いにこくりと頷けば「正直なところ、僕は君が見たという不思議な映像を信じていない。むしろ、君が何らかの情報を得ている危険人物だと思っている」と降谷さんが私に告げる。
「降谷ちゃん言い方」と萩原rさんが窘めるけれど、それを一切気にすることなく「とは言え、ヒロが死ぬ可能性があると言われた以上は聞かなかった事にはできない。君が見た映像とやらを全て、僕たちに教えてくれ」と降谷さんは私に頭を下げた。初めからそのつもりだったし、降谷さんの言い分も最もだと思う。
降谷さんの隣で「俺からも、頼む。君が知っていることを、全部教えて欲しい」と諸伏さんも頭を下げるから「あ、あの…!頭を上げてください。今日は、その…最初から全部話すつもりで来てます」と伝えれば、彼らはほんの少し目を見開いてからホッとしたように肩の力を抜いた。
それから、ぽつりぽつりと頭の中で流れた映像を説明していく。真っ暗な廃ビルの屋上。諸伏さんと、アカイさんと言うアメリカからの潜入捜査官。諸伏さんは、彼から奪った拳銃で、胸ポケットにあったスマホごと己の心臓を撃ち抜いた。胸から溢れた赤と、冷えていく体。色を失っていく唇と、悔しげに歪められた降谷さんの顔。
一つずつ、正確に、丁寧に。そうやって伝えようとすればするほど、頭の中には思い出したくもないような鮮やかな映像が浮かぶ。胃がキリキリと痛んで、目の前がチカチカと点滅する。キツく握り締めた手が冷たい。目を閉じてしまいたくなった瞬間だった。
膝の上で握り締めていた手に萩原さんと松田さんの手が重なって「無理して思い出さなくていいんだよ」「言いたくないことは言わなくていいって言ったろ」と二人が心配そうに私を見る。二人の優しい声にゆっくりと息を吐いて、諸伏さんの死ぬ瞬間の様子を言葉にするけれど頭がガンガンと痛む。
ひゅうっと呼吸が乱れて、体がぐらりと傾く。「ッ香澄ちゃん…!」と隣の萩原さんに支えられて「ゆっくり息しろ。大丈夫だから」松田さんがハンカチを私の口元に押し当てる。「ゆっくりだよ、ゆっくりね。そう、上手。いい子だね」と萩原さんが頭を撫でてくれて「ちゃんと話せてたじゃねぇか。偉いな、もう大丈夫だからな」と松田さんも同じように頭を撫でてくれる。
ひゅうひゅうと喉が鳴って苦しかった呼吸が少しずつ落ち着いていく。驚いた顔をする降谷さんに対して、諸伏さんはどこか申し訳なさそうに顔を顰めていて、思わず声を発してしまった。「あなたの、せいじゃない」と小さく呟いた声が聞こえていたかは分からない。けれど視線は確かに諸伏さんと交わっていたから聞こえていたと信じたい。
上手く話せただろうか、私の話した内容で彼を救えるだろうか。そう思いながら萩原さんに凭れるようにしていれば「少し休もうか。大丈夫、ゆっくりおやすみ」と萩原さんの大きな手が目元を覆ってくれる。「ごめ、なさい…」と謝った私に気にするなと言うように松田さんが私の頭を撫でた。