「これは、あの本当にあくまでもこういう人もいるよ!ってだけですからね!これが答えでは無いですからね!」と私は全力で念押しをしてから話し始めた。すごく緊張する!なにこれ!
伊達さんからの相談は随分と微笑ましいものだった。プロポーズする上で、どんなシチュエーション、どんなプレゼント、どんなセリフが嬉しいと思って貰えるのか。「色々、調べては見てるんだが…ありすぎて分からなくなっちまってな…」と恥ずかしそうに人差し指で頬をぽりぽりと掻いた伊達さんに「ふふ、」と思わず笑みが零れた。
「こんなに悩んでくれてたら、それだけで彼女さん喜びそうですけどね」とクスクス笑えば「そ、そうか?そうだと、いいんだが…」と伊達さんは益々恥ずかしそうに頬を緩ませる。「ちなみに今はどうしようと思ってんの?」と萩原さんの問いに伊達さんは照れながら「明日辺りにでも指輪を買いに行こうと思ってんだ。ありきたりだが、指輪と花束を渡してプロポーズしようと思っててな」と言うから「へえ!いいじゃん!」「ヒュ〜班長やるぅ〜」と萩原さんと松田さんが盛り上がる。
「場所は?」「夜景が見えるレストラン?」「あんまりガチすぎるとバレねぇ?」とわいわい盛り上がる男の人たち三人をにこやかに見ていれば「ってちげぇよ。香澄から女子側の意見聞きに来たんだろ」と松田さんがハッとする。「そうだよ!え、香澄ちゃん的にどう?班長のプロポーズ大作戦」と萩原さんがずいっと前のめりになって「いや作戦名ダセーな」と松田さんが突っ込む。
伊達さんは緊張したようなドキドキした面持ちで私を見ていた。「え、えぇ…」と頭の中で色々と考えを巡らせながら全力で念押しの前置きをしてから話し出す。「えっと、まず花束はデカすぎると邪魔って意見が多いです」と言えば三人の目が大きく見開かれる。
「えっ、花束嬉しくないの!?」「人によります」「香澄は?」「私は花束貰うくらいなら造花の小さめの置物とか、お花の形した入浴剤とかの方が嬉しいですかねぇ」「よくあるバラの花束とかは…」「生花は扱いに困るので…あと花瓶が常備されてるおうちは少ないかと」と男性陣の驚きの声をバッサバッサとなぎ倒す。
「あと、指輪も要注意ですかねぇ」と言えば三人は怯えたような顔で「ど、どういう…?」と尋ねてくる。「これも人によりけりですけど、渡された指輪が好みじゃなかったり、サイズが合ってなかったりするとトラブルになり兼ねないです」と言えば三人が目を見開いて固まる。盲点です、と言わんばかりの驚きの顔に思わず苦笑いが零れる。
「あ、はは…個人的には、これから生計を共にする人が大金を使う時に何の相談も無しって言うのはちょっと…先に言って欲しかったな〜って思っちゃいますねぇ。あと、この先ずっと付けるお揃いの指輪なら一緒に選びたいですしね」と肩を竦めれば三人はコソコソと話を始める。
「おい班長、考え直せ」「彼女さんの好み、ちゃんと分かってんのか」「いや自信は無い」「胸張んな」「ダメだこれ」「花束もダメか…何ならいいんだ」「そもそもサプライズじゃなきゃダメなの?」「女はそういうの好きだろ」「いや多分松田の考えがダメってことだろ」「ダメって言うな」と始まった男性陣の作戦会議を微笑ましく思いながら見つめる。
堂々巡りの挙句、着地点を見失い出した作戦会議に終止符を打つべく「結婚して欲しいって言ってもらえることが何よりのサプライズだと思いますよ」と声をかければ、三人の目が一斉に私を見る。
「大事な人との大事な瞬間は、それだけで特別なものですよ。デートに行って、ちょっとお高めのレストランで一緒にご飯を食べて、結婚しようって言われたら、それだけで特別な日になりますよ。それで指輪を一緒に見に行こうって言われたら、嬉しいと思うけどなぁ」と言えば「そう、いうもんなのか…」と伊達さんが納得したように呟く。
「人によりけり、ですけど」と再び念を押すように肩を竦めて笑って見せれば「…ありがとう。参考にさせてもらう」と伊達さんは晴れやかに笑ってくれた。「いえいえ。お役に立てたかは分かんないですけど、良かったです」と笑い返せば「香澄ちゃんもそういうのがいいの?」と萩原さんがきょとりと首を傾げて聞いてくる。
「私ですか?」と聞き返せば「うん。香澄ちゃんはどんなプロポーズがいいなあって思う?」と再び質問される。ちょっとだけ考えてから「ベタだけど跪いて指輪の箱パカッてされたらドキドキしちゃいますねぇ」と言えば「はぁ?指輪は先に買うなっつったじゃねーか」と松田さんが突っ込んでくる。
「だから箱だけです。中身は空っぽでいいんですよ。この箱に入れる指輪を一緒に選びに行こうって、言われるの。前に映画で見てすっごくドキドキしたんです!」といつか見た映画を思い出してきゃあきゃあとはしゃげば「香澄ちゃんって結構ベッタベタな展開好きなんだね」と萩原さんが楽しそうに笑った。