本当に、説明をください

「起きたか?気分はどうだ?」と私の顔を覗き込む千速さんに「お、はよう…ございます…?」と首を傾げた。な、なぜ…?どうして…?萩原さんと降谷さんの前で泣きじゃくって、目が覚めたら目の前に千速さんがいた。「あ…っ、え?」と首を傾げれば、軽いノックの音が響いて部屋の扉が開く。

「お、起きてる」と顔を覗かせた萩原さんがにこりと笑うから「あ、あの、なんで…」と千速さんと萩原さんを交互に見つめる。すみません、本当に状況が分かりません。「とりあえず、ご飯食べよっか」と部屋に入ってきた萩原さんに頭を撫でられて「……は、はい…?」と混乱しながら頷いた。

千速さんに連れられて部屋を移動すれば、テレビを見ていた松田さんが「お、起きたか」と私を見る。「松田さん…?え、あの、本当に、状況が分かんなくて…」と説明を求めて千速さんを見れば「まあ細かいことは後でにしよう。陣平、飯にするからそこ片付けとけよ」「ういー」「もうちょっとで出来るから、そっち座って待ってて」「だそうだ。飯は研二に任せて休むといい」と私以外の三人が勝手知ったる様子でぱたぱたと動き始める。あの、本当に、説明をください。

「香澄、何飲む?」「えっ、あ、お水で…」「ハギ、水」「え、水でいいの?お茶あるよ?香澄ちゃんお茶いらない?」「えっ、いや、あの…」「飲むのか飲まねぇのかどっちだ」「あっ、じゃあ…いただきます…」「自分の家だと思って寛いでいいからな」「あ、あの千速さん、」「ほい、おまたせ〜。不味くはねぇと思うけど、口に合わなかったらごめんな?」と混乱する私を誰一人気に止めてくれない。

松田さんがお茶を入れてくれて、萩原さんが美味しそうな香りを漂わせるうどんを持ってきてくれる。千速さんは優しく笑いながら私の向かいに座ってて、よく分からないまま手を合わせて「いただきます」と呟く。隣に萩原さんが座って、松田さんは千速さんの隣に腰を下ろす。

三人に見守られながら、恐る恐るうどんを口に運ぶ。優しい味に思わず「おいしい…」と声が零れて「良かったぁ…めっちゃ緊張するね、これ」と萩原さんが安堵の息を吐いてへにゃりと笑う。もう一口食べて、おつゆを飲んで。久しぶりのちゃんとした食事と、安心感でぽろぽろ涙が零れる。

「おい…っしい、です、」と泣きながら食べれば「良かった。食べれる分だけでいいからね」と萩原さんが頭を撫でてくれる。こくこくと頷いて、何度も美味しいと言いながら結局しっかり全部食べてしまった。「ごちそう、さまでした」と目元をぐしぐしと擦りながら言えば「お粗末様でした」と萩原さんの手が頭をぽんと撫でる。

食べ終わった器を萩原さんが持っていこうとするから「あっ、片付けは私が…!」と立ち上がれば「香澄ちゃんはこっちな」と千速さんに手を取られる。「必要な物は後でアイツらと取りに行くとして、今日はひとまず私の物を使ってくれ」とスウェットや新品の下着類をぽいぽいと渡され「えっ、あの、…え?」と混乱している間に、あっという間に脱衣所へ連れて行かれてしまい「ちゃんと肩まで浸かるんだぞ」と千速さんに頭を撫でられて一人になる。

「……え?」と何度目かの混乱の声を上げながらシャワーを浴びて、湯船に浸かる。体を拭いて、スウェットに着替えて、首にタオルをかけて、そうっと先程の部屋に戻れば「あれ、早いね。ちゃんとあったまった?」と萩原さんが私を見て笑う。

「は、はい…!あの、ありがとうございます…」と頭を下げれば「香澄、こっち来い」と松田さんが手招きをする。ぺたぺたとそちらへ足を向ければ「ちゃんと乾かして来いよ。風邪引くだろ」と首にかけていたタオルで頭をわしわしと拭かれる。

「ほい、陣平ちゃん」と萩原さんがドライヤーを持ってきて、あれよあれよと言う間に松田さんが私の髪を乾かし始める。「じ、自分でやります…!」と言っても「あ?聞こえねぇな。大人しく座っとけ」と聞く耳を持って貰えずにソファに座っていればうつら、うつらと眠気が押し寄せてくる。

寝ちゃダメだ、と思っているのにお腹はいっぱいで、体もぽかぽか。ドライヤーの音に混じって、萩原さん達の話し声が聞こえてきて、ここは安全な場所なんだと本能が訴えかけてくる。寝ちゃダメなのに。そう思いながら、私はゆっくりと眠りに落ちてしまった。
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