「夜は私が作ります!」と張り切って料理の支度をしていれば千速さんが帰ってくる。ぱたぱたと玄関まで行って「おかえりなさい!」と声をかければ、千速さんが驚いたように目を丸くする。けれど、すぐにふわりと微笑んで「ああ、ただいま」と頭を撫でられる。
「昨日はありがとうございました!今日からしばらくお世話になります!」と頭を下げた私に「なに、気にするな。実はな、私は可愛い妹が欲しかったんだ。研二には内緒だぞ」と悪戯っ子のように千速さんが笑うから釣られて笑みが零れる。
「ふふっ、了解です。内緒ですね」と人差し指を口元に持ってきて内緒のポーズをすれば、千速さんも同じポーズをして「私と香澄ちゃんだけの秘密だぞ」と笑ってくれる。二人でリビングへと向かえば「お、姉ちゃんおかえり〜」「おかえり。マジで早かったな」と萩原さんと松田さんがこちらを見る。
「なんだ、まだいたのか陣平。まさか今日も泊まる気か?」「なんだよ、悪いのかよ」「誰もそんなこと言ってないだろう。泊まるんだったら働けよ」「へーへー」と家族のようなやり取りをする二人をぽかんと見てれば「香澄ちゃんは今日の夜ご飯当番だから、風呂掃除は陣平ちゃんよろしく〜」と萩原さんが私の肩に手を置きながらけらけらと笑う。
「げ、マジかよ」と嫌そうな顔をした松田さんを見て「私やりますよ!」と手を上げれば「働かざる者食うべからず、だぞ」と千速さんがジト目で松田さんを見つめる。「わーったわーった。やりゃいいんだろ、やりゃ」とソファから立ち上がった松田さんが「飯、あとどんくらいで出来る?」と聞いてくるから「30分くらい、かな…?と思います」と返せば「んじゃ風呂洗ってくるわ」と私の頭をくしゃくしゃと撫でてリビングを出ていった。
松田さん、私の頭よく撫でるよなぁ…と思いながらキッチンに戻り料理をしていれば、キッチンカウンターに片肘をついた萩原さんが「なぁんか香澄ちゃんがウチでエプロンしてご飯作ってんの、変な感じする」と笑うから「私もですよ。人生何があるか分かんないですねぇ」とクスクス笑う。
「新婚さんみたいでドキドキしない?」と聞いてくる萩原さんの悪戯っ子の顔に「もう少しでご飯ができるので、そっちのテーブルの上片付けておいてくださいね、あなた」とわざと返せば、萩原さんの顔がじわじわと赤くなっていく。「ぅぁぁああ……俺が悪かったです。ごめんなさい」と顔を隠すようにキッチンカウンターに突っ伏してしまうから「あはは!いっつも意地悪されるのでやり返しちゃいました!」と声を上げて笑ってしまった。