似合うかどうかは別として

「ね、香澄ちゃん。俺とデートしない?」と片肘をついて手のひらに顎を乗せた萩原さんがふんわり笑う。「へ?」と目を瞬かせた私に「俺の買い物に付き合って欲しいんだけど…だめかな?」と萩原さんが可愛らしくこてんと首を傾げた。

日頃からお世話になっている萩原さんの誘いを断る訳にもいかず、了承した私は萩原さんに連れられてリニューアルしたばかりのショッピングモールを訪れていた。「どう?」と自分の体に洋服を当てる萩原さんに「すっごく似合います!」とお世辞抜きに褒めれば「ほんと?ありがとう」と楽しそうに笑ってくれる。

「さっきのとどっちがいいかな?」「んー…個人的にはこっちの方が好きですね」「あ、ほんと?じゃあこっちにしよ」「あっ、そういうつもりじゃなくて…!」「分かってるよ。香澄ちゃんに選んでもらった服が欲しかっただけ」と笑いながら私の鼻をちょんと人差し指でつついた萩原さんに思わずぽかんとしてしまう。

言葉の意味を理解して、じわりと頬を染めながら「…萩原さん、すぐそうやってからかう」と不安げに唇を尖らせれば「ははっ、ごめんごめん」と萩原さんが私の頭を撫でる。「今度は俺に選ばせて」とご機嫌の萩原さんに手を引かれて、今度はレディースの洋服が売っているお店に足を踏み入れる。

「これとかどう?」と洋服を手に取って私に当てる萩原さんに「こんな華やかな色、似合わないですよ…」と苦笑いをすれば「えっ、そんなことないでしょ。香澄ちゃん可愛いから、すっげぇ似合う」と優しく微笑まれてぐっと言葉に詰まる。

「…絶対嘘」と呟いてぷいっとそっぽを向けば「ほんとなのに。あ、じゃあ上にこのカーディガン合わせたらどう?ほら、可愛くない?」と別の服を持ってきて合わせてくれる。確かにふんわりと柔らかい雰囲気になって、先程よりも普段使いしやすそうになった。

「…似合うかどうかは別として、可愛いですね」と返した私に「似合ってるよ。可愛い」と鏡越しに私に微笑んだ萩原さんが、指の背でさらりと頬を撫でる。ぶわっと顔が赤くなった私を見てくつくつと喉を鳴らした萩原さんは「他の服も見てみよっか」と私からすっと離れる。

逃げるように別の棚の前に移動してばくばくと跳ねる心臓をぎゅっと押さえるように服を握り締めた。心臓が、うるさい。少しして「いいのあった?」と顔を覗かせた萩原さんに「あっ、えっと、特には…」と返せば「じゃあそろそろ休憩しよっか」と手を引かれてカフェに入る。

お互い注文を済ませて席に座ると「はい、これ今日のお礼」と先程のお店の袋を渡される。「え!?」と驚きながら袋の中を見れば鏡の前で合わせていた二着が入っていて「な、なんで…」と萩原さんを見つめれば「すっごい似合ってたから着て欲しくてさ。今度俺と出かける時に着てきてよ」とぱちりとウインクをした萩原さんに「あ、りがとう、ございます…」と返して袋をぎゅっと握り締める。恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちでふにゃりと頬が緩んだ。
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