「来週の週末、暇か?」と聞いてきた松田さんに「特に予定はないですけど…」と首を傾げながら返せば「ちょっと付き合え。土曜の10時に迎えに行くから。動きやすい格好してこいよ」と楽しそうに笑った松田さんにくしゃりと頭を撫でられた。
よく分からないまま連れて来られたのは最近リニューアルしたテーマパーク。「行くぞ」と手を引かれて「えっちょ、チケット…!松田さんお金…!」と混乱しながら着いていく。「知り合いからチケット貰ったんだよ」だから金はいらねぇ、と言う松田さんに「それなら萩原さんとか誘えば良かったんじゃ」と首を傾げれば「何が楽しくて野郎二人でテーマパークに来なきゃいけねーんだよ」と嫌そうな顔でびしりとデコピンをされる。
「たまにはいいだろ。気晴らしだ」と私の頭をぽん、と撫でた松田さんが優しく笑うから「…ありがとう、ございます」と頬が緩んだ。それからはとにかく大はしゃぎだった。「あっ、見て見て松田さん。おそろい!」と薄色のサングラスをかけて見せれば「ふはっ、お前サングラス似合わねぇな」と笑いながら松田さんも同じデザインのサングラスをかける。
「俺のが似合うだろ」とドヤ顔で笑う姿に「あはは!やっぱりサングラスは松田さんが一番似合いますね!」と声を上げて笑えば「お前はこっちでも付けとけ」と大きなリボンが付いたカチューシャを被せられる。「ええ、こんな可愛いの似合わないですよ」と鏡を見ながら苦笑いを零せば「あ?似合ってんだろ、普通に」ときょとんとしながら返されてしまう。
ナチュラルな褒め言葉に一瞬言葉に詰まって「ぅぇっ…、そうですか…?」と視線を反らせば「ん、可愛いじゃん」と頭を撫でられて心臓がばくばくと音を立てる。「…ま、松田さんも何か付けましょうよ!せっかくですし!」と誤魔化すように松田さんに背を向けてカチューシャや被り物を探すフリをする。
こういう所で照れたりしない松田さんのスマートさにむずむずしながら「これとかどうですか?」とふわふわもこもこの大きな帽子を差し出せば「絶対邪魔だろこれ」と笑いながらも被ってくれる。「ふふっ、似合ってますよ…ふふ、」と笑いを堪えてぷるぷる震えながら松田さんから視線を逸らした私の頬をむぎゅりと片手で掴んだ松田さんが「俺の目見て言ってみろ、コラ」と片眉を上げる。
「あはは!可愛くていいじゃないですか!」と声を上げて笑えば「俺が可愛くてどうすんだ!誰得だよ!」と松田さんも同じように声をあげて笑う。結局大きなリボンの付いたカチューシャとふわもこの大きな帽子を購入した私たちは、それを身につけたまま思う存分テーマパークを楽しんだ。
閉園も近付いてきて人も疎らになったパーク内で「楽しかったか?」と松田さんが笑う。「はい!すっごく楽しかったです!」と興奮冷めやらぬ私が元気良く返事をすれば「そりゃ良かったな」と柔らかく笑った松田さんが私の頭をぽんぽんと撫でる。そのまま髪の毛を梳くように撫でられて、視線が交わる。
「あの…松田さん…?」と恐る恐る見上げれば「何でもねーよ。そんなに楽しかったなら、また連れてきてやる」と眦を下げて緩く微笑んだ松田さんが勢いよくぐしゃぐしゃと私の頭をかき混ぜる。「わわっ…!?何するんですか!」と慌てる私を見て「はははっ!」と松田さんが楽しそうに声を上げて笑った。