おまわりさんって、たのもしい

「香澄さん、少し手伝って頂きたいことがあるんですけど…」と困った様子で声をかけてきた降谷さんに「私でお手伝いできることなら、ぜひ」と答えたら、何故か降谷さんの車に乗せられて海にやって来ていた。最初からずっと意味が分からない。

「私、これから沈められたり…?」と恐る恐る背後の降谷さんを見れば「何でだ。沈めないよ」と肩を震わせて笑う。「ただ、少し気晴らしにね」と言いながら海を見つめる降谷さんの隣に腰を下ろして、同じように海を見つめる。「探偵のお仕事って言うのは、嘘ですか」と抱えた膝の上に顎を乗せながら尋ねれば「嘘も方便って言うだろ?」と片眉をあげて得意げな顔の降谷さんが私を見つめる。

「ああ言えばこう言う…」とぶすりと唇を尖らせた私の頭を髪の毛を梳くようにそっと撫でて「怒ったか?」としょんぼり眉を下げるから「……怒ってませんけどぉ…」と小さな声で呟く。この人、自分の顔が良い事をちゃんと分かってるんだよなぁ。「君に、この景色を見せたかったんだよ」と私の頭をぽんと撫でた降谷さんがすっと目を細める。

太陽の光できらきら輝く金色の細い髪の毛と、空と海を映したような綺麗な青い瞳。「僕の大事なものを、人を、守ってくれた君に改めてお礼が言いたかったんだ」と降谷さんは海を見つめたまま、ゆっくりと話す。「君がいなかったら、きっと、僕は今頃一人だった」と微かに震えた声にハッとする。

「君がいたから、僕は一人じゃない」と降谷さんの視線が私に向く。ゆっくりと手を握り締められて「本当に、ありがとう。君が、僕たちを繋いでくれた。君が、守ってくれたんだ」と降谷さんの眦がゆるりと下がって、優しく微笑む。「だから、君が迷った時、困った時、怖いと思った時。いつでも呼んでくれ。君の力になるから。僕も、アイツらも」と降谷さんの手がゆっくり伸びてきて、顔の横の髪の毛をそっと耳にかける。

そのまま頬に添えられた手がゆっくりと頬を撫でる。「クマ、できてる。ちゃんと、眠れてないんだろう?」と心配そうに眉を下げた降谷さんにギクリと肩が跳ねた。「アイツらも心配してた」と目の下を降谷さんの親指がするりと滑る。「すぐにとは言わない。無理にとも言わない。でも、君が望んだ時に伸ばされる手が沢山あることは、忘れないでくれ」と後頭部に回った降谷さんの手がくん、と私の体を抱き寄せる。

優しく抱き締められて、まるで小さな子供をあやす様にとん、とん、と背中を撫でられる。「君の安心を、君の平和を、僕たちに守らせて」と祈るような声に、喉がきゅうっと狭まって、涙が頬を静かに伝っていく。縋るように降谷さんの服の裾をきゅっと握り締めて「ふる、や、さん」と名前を呼べば「うん」と声が返ってくる。

「おまわりさんって、たのもしいですね」と震える声で伝えれば「そうだろ」と得意げな声が返ってくる。「今日は、安心して寝れそうです」とへにゃりと笑った私の頬を撫でて「それは良かった」と降谷さんも優しく笑った。
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