一番強いお巡りさんたち

「目、後で冷やさないと腫れるな…これ…」と呟いた降谷さんが私の目元を親指でぐいっと拭う。「んぅ…そんなに、やばいですか…?」と尋ねれば「…まあ」と微妙な返事。「かっこよく、コナンくんを送り出したのに…情けないです…」としょんぼり肩を落とせば「あー…それなんだけど…」と諸伏さんが言いにくそうに言葉を濁しながら人差し指で自分の頬をぽりぽりと掻く。

えっ、なんですか。こてん、と首を傾げた私に「コナンくんがこの部屋に来てからの会話は全部聞いてたんだ、俺たち」と諸伏さんがへらりと笑う。「え…?」と目を瞬かせてから降谷さんを見れば「君の安否が分からなかったからな」と悪びれる様子も無く返ってくる。

「あの坊主を追い出した後のお前の独り言もちゃぁんと聞いてたぜ」とニヤニヤ笑った松田さんが私の服の袖に手を伸ばす。ぺろりと剥がされたシールのようなものをじぃっと見つめれば「これ、盗聴器だから」と萩原さんが笑う。「とっ…!?な、え、いつ…!?」と驚きで目を見開けば「コナンくんに付けてもらったんだよ。君の様子がこちらからも伺えるようにね」と降谷さんがくすくす笑いながら答える。

「ちなみに今までの会話は、下で避難誘導してる班長にも聞こえてるから」と笑う萩原さんにガックリ肩を落とした。「じゃあ…あれですか…私がカッコつけたくせにびいびい泣いてたのも全部皆さんに筒抜けってことですか!?」と両手で顔を覆って「さいあく…もうはずかしい…やだ…」としくしく泣く。

どうして…コナンくんも教えてくれれば良かったのに…ていうか盗聴器って何!?「え〜?俺らは結構嬉しかったけどなぁ。ね、陣平ちゃん」とニヤニヤ笑った萩原さんに「まあ直訳したら俺たちのことが大好きでしょうがないから巻き込みたくないです、だもんな」と松田さんも同じようにニヤニヤ笑う。

「〜〜ッう、うるさいですよ!!」と抗議の声をあげる私を見て二人がけらけら声を上げて笑う。「まあでも、実際嬉しかったんだよ」と諸伏さんが私の頭を撫でる。「香澄ちゃんに大事に思ってもらえてるって分かったから」と優しく微笑みかけられて言葉に詰まる。

「……そりゃ、そうですよ」と唇を尖らせてぷいっとそっぽを向く。恥ずかしくて顔なんて見てられない。この人たち、本当に恥ずかしいことを平然と言うんだもん!と不貞腐れていれば「それに、僕たちの命を救ってくれた君の命がかかってるんだ。僕たちが助けずに誰が助けるって言うんだ?」と降谷さんが得意げな顔で私を見る。

「今更他の誰かに持ってかれるとか勘弁したいもんねぇ」と萩原さんがけらけら笑う。いつものように会話をしているけれど、諸伏さんと降谷さんは私の首に付いたチョーカーを調べているし、萩原さんと松田さんは爆弾の解体を進めている。状況は何一つ変わっていない。

爆弾は依然として動いていて、タイマーの数字もどんどん減っていってる。首に付いたチョーカーも外れる様子は無いし、私の命が崖っぷちに立たされていることは変わっていないのに。「ふふ、」と笑みが零れてしまった。「この状況で……肝座ってんだかビビりなんだか分かんねぇな」と苦笑いの松田さんに「さっきまでは怖かったですよ。でも、今は何か、大丈夫な気しかしなくて」と我慢できずにくすくす笑ってしまう。

だって、絶対大丈夫って本気で思えるんだもの。「私が知ってる中で、一番強いお巡りさんたちが来てくれたんです。心配することなんて、一個も無いですよ」と頬を緩めてへにゃりと笑った私に全員が目を見開く。「ははっ、そこまで言われたらカッコ悪いとこ見せらんないね」と諸伏さんも声を上げて笑う。

釣られるように皆も笑っていて、肩に入っていた力が抜けていく。「よろしくお願いします」と改めてお願いをすれば「任せとけ」と頼もしい返事が全員から返ってくる。いつの間にか止まった震えも、感じなくなった寒さも。全部、私のために駆けつけてくれた皆のおかげだ。こんな状況なのに、溢れる笑顔は我慢できなかった。
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