「なるほどな」と呟いた彼に「今ので……?」と思わず怪訝な顔をしてしまう。「信じて欲しいのか疑って欲しいのかどっちなんだよ」と眉間に皺を寄せた彼に「し、信じて欲しいですけど、そんなにすんなり受け入れられても……」と困った顔で返せば「ハギから大体聞いてるって言ったろ」と彼はため息を吐いた。
面倒くさそうにガリガリと頭を掻きながらため息を吐いた彼に伝えたのは萩原さんに伝えたのと同じように彼が爆発に巻き込まれて命を落とす可能性があるということ。萩原さんもだが、この人も、どうしてこんなにすんなり受け入れてくれるんだろう…と思うと、自然に眉間にシワが寄ってしまう。
きゅうっと顔を顰めて彼を見れば「お前の話を丸ごと全部信じてる訳じゃねぇ。犯人しか知り得ないことを知ってるってのは、普通に考えたら疑うべきもんだからな」と静かな口調で言われる。それは、その通りだ。返す言葉も無く唇を噛み締めて、膝の上で握り締めた手を更にキツく握り締める。
「でも、ハギが言うんだよ。どんだけ突飛な内容であっても、どんだけ信じられなくても、あの日今にも泣きそうな顔で必死に伝えようとしてくれた恩人を疑いたくないって。ヤベー女に騙されてんじゃねぇのって思ってたんだが……アイツが言いてぇこと、分かった気がすんだよな」と彼がふっと笑う。
「自分から声かけてきたくせに、そんだけ青い顔して泣きそうですって面してるような奴、疑うだけバカバカしいだろ」と頭の後ろで手を組んでソファ席にもたれかかった彼に「…へ、ぇ?」と間抜けな声が口から零れ落ちる。「ま、これで全部演技でしたって言われたら俺らの見る目が無かったってだけだ」アンタが気にする事じゃねぇよ、と続けられた言葉にきゅうっと胸が苦しくなった。
どうして、あの人も、彼も、こんなに優しいんだろう。「ご、ごめんなさい、嫌な気持ちになりましたよね。知らない奴から、あなたは死にますなんて、」と泣きそうになりながらも謝れば彼は「はぁ?」と眉を寄せた。「嫌な思いしてんのはお前だろ」と返された言葉の意味が分からずに首を傾げる。一体、何を言っているんだ。
「突然死ぬ様見せられた挙句、そいつが目の前にいるとか不快に決まってんだろ。しかもそれを本人に伝えるっつーのも、どう考えても聞いてるだけの俺よりお前の方が不快だろ」と至極当然、と言わんばかりの顔で私を見た彼は、更に「あー……だから、その、あれだ。アンタのお陰でアイツは救われたし、俺も死なずに済む。……ありがとな」と続ける。ぽろっと涙が零れて「……こちらこそ、ありがとうございます」と笑みを浮かべれば、彼は微かに目を見開いてから「おう」と微笑んだ。