何故か私は半個室のちょっと良い所の焼肉屋さんに連れて来られていた。「はい、メニューどうぞ」と優しい顔で笑った萩原さんからメニューを受け取って「……あ、ありがとうございます……」と開く。待って何でウーロン茶がこんなに高いの。
予想していなかった価格帯にお財布の中身が心配になっていれば「何でも好きなの頼んでいいぞ」と松田さんが言うから「えっ……あっ、じゃあナムルとか……」と恐る恐る口にすれば「あ?」と怪訝な顔をされてしまい「ひえ、」と声が漏れた。
「今日は俺たちの奢りだから、好きなだけ食べて飲んでいいよ」と言ってふわりと微笑んだ萩原さんに、そんなこと言われても……と困った顔をしていれば私の手の中にあったメニューが松田さんに取り上げられる。「俺とハギはビールな。お前は?」とメニューを見ながら尋ねられて「えっ、あっ、ウーロン茶で……」と返せば「あれ?お酒飲まないの?」と萩原さんが首を傾げる。
まさか高いので飲みません、なんて面と向かって言えるはずもなく「その、あんまり強くない、ので……」と当たり障りのない返事をすれば松田さんが意地の悪い顔でニヤリと笑う。「へぇ?ならこの間買ってた酒は誰用なんだろうな」と言う松田さんにギクリと肩が揺れた。……そうだった。
松田さんに声をかけた日は、ついでにお酒も買っていたんだった。透明な袋を持っていたから、見る人が見れば当然気付かれてしまう。「あ、はは…だ、誰用ですかねぇ…」なんて、下手くそな誤魔化し方に彼らが誤魔化されてくれるはずもない。「一番高いシャンパンと自分で選ぶの、どっちがいい?」という地獄のような2択に観念するしかなかった。
「……レモンサワーで、お願いします」と返せば「りょ〜かい。なんか食べれない物とかある?適当にサラダとか頼んでいい?」と萩原さんが横から声をかけてくる。もうこの際二人に任せてしまおうと「大体なんでも食べれます」と返せばあれこれと注文されていく。「あ、あの……ほんとに、何でこんな、」と狼狽える私を見てぱちぱちと瞬きをした萩原さんが片肘を付いてふんわりと微笑む。
「そりゃあ、俺たちの命を救ってくれた女神様だもんよ。俺が連絡してものらりくらりで返事くれないしさぁ。研二くん、寂しくて泣いちゃう」と泣き真似をする萩原さんに「そ、そんな、だって……お礼されるようなこと、」と困った顔で返せば「いいんだよ。俺らが勝手にやってんだ。ラッキーだと思って受け入れとけよ」と松田さんも同じように言ってくる。
「……ありがとう、ございます」と頭を下げれば「それ俺らのセリフね」「お前は偉そうにふんぞり返ってろ」と二人が楽しそうに笑うから「それはちょっと、」と釣られるように笑みが零れた。「ご飯いる?」「まだいらねぇ」「香澄ちゃんは?」「あっ、大丈夫です」「そ?あ、ビビンバある。後で半分こしようよ」「は、はい…!」「飯は後でいいから肉頼めよ、肉。香澄もいいから早く肉頼めって思ってんぞ」「え゛っ思ってないですよ…!」