家族のフリをしてみる

まさか、お店の中で変な人に追いかけ回されるとは思っていなかった。ずっと後ろを着いてきている人がいて、このまま家に帰るのもなぁ…と思いながらショッピングモールを転々とすること数十分。

諦めて萩原さんたちに連絡しちゃった方が早いかな…と思い始めたタイミングで背後から声をかけられた。「ママ!」と駆け寄ってきたコナンくんに目を見開いていれば「ママどこ行ってたの?僕もパパも探してたんだよ!」とコナンくんが私の足にぎゅっと抱き着いて声を上げる。

「あ、えと、ごめんね…?」としゃがみ込んでコナンくんと目を合わせれば、きゅうっと首に腕が回る。反射的にコナンくんの背中に手を回すと「探しましたよ。連絡したの、気付いてますか?」と知らない男の人が声をかけてくる。

目をぱちぱちと瞬かせてれば「あ!パパ!」とコナンくんが振り返る。なるほど、そういう事か。すぐにコナンくんがやろうとしていることが分かって「ごめんなさい。つい、夢中になっちゃって」と眉を下げて謝れば「欲しいものは見つかりましたか?」と尋ねられて「今日は収穫なしでした」と肩を竦めれば「それは残念。さて、帰りましょうか」と同じように肩を竦めて返される。

コナンくんを真ん中にして3人で手を繋いで歩き出せば、ずっと着いてきていた人はいつの間にかいなくなっていた。そのままショッピングモールを出て暫く歩いて「そろそろ平気かな?」とコナンくんが私を見上げる。

「はぁぁぁ…ごめんね、本当にありがとう…助かりました…」と息を吐いた私は隣を歩いていた男の人にも向き直る。「本当に、ありがとうございました。ご迷惑おかけしてすみません」と頭を下げれば「いえ、気にしないでください」と柔らかく微笑んで返される。

「香澄さん、いつから着いてこられてたの?」と私の服の裾を引っ張ったコナンくんがジトリと私を見る。これはバレてるなぁ、と苦笑いをしながら「少なくても、30分以上かなぁ」と返せばコナンくんの目がぎょっと見開かれる。

「何でもっと早く連絡しないの!」と怒られてしまい「返す言葉もありません…」としょんぼり眉を下げる。「そういう時はすぐ連絡しなきゃダメだよ」とコナンくんの言葉に「これからは、そうするね。心配してくれてありがとう」とコナンくんの頭を撫でる。

「家まで送ろうか?」と聞いてくれたコナンくんに「ポアロに寄るから大丈夫」と返せば「ちゃんと、安室さんたちに話してね」と再びジト目を向けられる。「はぁい…」と苦笑いで返事をしてから「あの…!後でお礼をさせてください。本当に、助かりました」とずっと一緒にいてくれた男の人に名前を名乗る。

「沖矢と言います。本当に気にしないでください。困っている人がいたら助けるのは当然のことですから」と笑ってくれた沖矢さんに「そうですか…あっ、じゃあ今度沖矢さんが困った時は助けになります!いつでも言ってくださいね」と笑いかければ、沖矢さんが驚いたように目を見開いた。

「それは、頼もしいですね。その時は、ぜひよろしくお願いします」と言ってくれた沖矢さんとコナンくんに手を振って私はその場を離れた。「どうしてすぐに連絡しないんですか」「コナンくんにも怒られちゃいました。あっでも、沖矢さんっていう親切な人が助けてくれて…」「は???」「へ、」「沖矢さん、ですか。へぇ」「安室さん、何か怒ってます…?」「いいえ?怒ってませんよ」
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