「初めまして」と綺麗な顔で微笑んだのはテレビや新聞で見ない日は無いと言う程に有名な探偵くんだった。「は、はじめまして…」と恐る恐る挨拶をすれば「コナンから、仲良くしていたお姉さんがいるって聞いてて。挨拶したかったんです」と手を差し出される。
「そ、そうなんだ…。あっ、コナンくんは、元気?」とその手に自分の手を重ねながら尋ねれば「はい。元気ですよ」と笑顔で返される。へらりと笑ったぎこちない笑顔が、コナンくんの笑顔にそっくりで。
「……本当に、そっくり」と小さな声で呟けば「えっ」と驚きの声が返ってくる。「ふふ、コナンくんから親戚だとは聞いてたけど、本当にそっくりでびっくりしちゃった」とくすくす笑えば工藤くんは微妙な顔でへにゃりと笑う。
「コナンくんに、また一緒にケーキ食べようねって、伝えてくれる?」と少し寂しさを覚えながら肩を竦める。私が入院している時に一度だけ、コナンくんは顔を見せに来てくれた。私のことを沢山心配してくれて、もうあんなこと言わないでねと不満そうに唇を尖らせて怒っていた。
それから少しして、家族と共に海外に引っ越すことになったと聞いて別れを惜しんだのは記憶に新しい。賢い子だったけれど、それが故に危ない所もある子だった。お節介かもしれないけれど、甘やかしたくて沢山構ってしまった。
「面倒な人だなって、思われてたかもしれないけど…可愛い、大事な、友達だったんだぁ」とコナンくんを思い出して頬が緩む。「香澄さん、」とかけられた声にハッとして顔を上げれば「……コナンは、香澄さんのこと、好きでしたよ。優しくて、頑固で、凄く強い人だったって」と工藤くんが私をまっすぐ見つめる。
その顔が、コナンくんに本当にそっくりで、思わず「……そっ、か。それなら、よかった。ありがとう、工藤くん」と笑みが零れた。そんな私に「あ、の…もし、良ければなんですけど、コナンに香澄さんの話をしてやりたいので俺とも、ケーキ半分こしてください」と工藤くんがくしゃりと笑う。
覚えのあるセリフに、初めてコナンくんに会った日を思い出した。「もちろん!今度は、工藤くんの好きなケーキも教えてね」と笑った私に「うん。ありがとう、香澄さん」と工藤くんが微笑む。ふわりと吹いた風が優しく頬を撫でる。何となくコナンくんにはもう会えないような気がして、涙が滲んだ。