「マジで諸伏ちゃんそっくり」「ハギんとこもだけど兄弟似すぎだろ」とワイワイする萩原さんたちの後ろで私は顔を覆って泣いていた。「だからなんで私まで!!」「兄さんに俺の大事な友達を紹介しようと思って」「私いります??」
諸伏さんに渡された長野行きの交通機関のチケット。「この間のお詫びだよ。街づくりイベントがあるらしくて、出店とかもあるから行ってみて」と言葉巧みに誘導されて駅に着いてみれば、あら不思議。
「何でいるんですか!!しかも全員!!仕事しろ!!」と膝から崩れ落ちた私を指差して笑った松田さんは許さない。絶対にだ。「騙したみたいになって悪かったな」と頭を撫でてくれた伊達さんにも「信じてたのに…裏切られた…もう何も信じられない…」としくしく泣いて見せる。
「さて、行きましょうか!」とにこやかな笑顔の安室さんに背中を押されて、やめて触らないで囲まないで私を今すぐ帰らせて!!と悲鳴が喉まで出かかった。そんな私の願いも虚しくやって来たのは長野県。そして目の前には普通に引くほどのイケメン。
「貴方が香澄さんですか」と何故か知られている名前と、半ば強引に握手をされた手は中々離れてくれない。「よろしくおねがいします私はもう帰るのでお気になさらずサヨナラもう二度と会うことはないでしょう」と流れるように告げて足を一歩引く。
「またすぐそういう事言って。ごめんね、兄さん。この子ちょっと照れ屋で」「照れ屋で済むレベルかよ」「まあまあこれくらいの拒否可愛いもんじゃない?」「やかましいんですよソコ!!!」と私の後ろでやいのやいの騒ぐ人たちを睨み付ける。
誰のせいでこうなってると思ってるんですかねぇ!?なんて意識が後ろに向いたのが悪かったのか、そもそもこの場に来てしまったのが間違いだったのか。握手していた手を握ったまま「景光から聞いていた通り、随分と快活な女性のようだ。是非、私とも仲良くして貰いたいものですね」とゆるく微笑みかけられてしまい「ぁっ…うぁ…っ、」と真っ赤な顔で固まってしまう。
な、何だこの人。大人の色気みたいな、やばい、この人マジ怖い。「ひ、ひぇ…っ、」と一歩足を引こうとすれば背後にいた諸伏さんが不満そうに声をあげる。「なんかさぁ…俺たちの時と反応違いすぎない?」とジト目で見つめられて「は、はぁ!?」と目を見開く。
「おや、私は特別、ということですか?」「あっ待ってください誤解を招くような言い回ししないでください」「兄さんには触るな離れろって言わないの?」「年上相手に言えませんよ!!」「俺らも年上だけど」「ッそ、それはそれ…!これはこれ…!」「なるほど、香澄さんは年上が好みですか」
「ちょ、まってお兄さんまってマジでほんと、もう喋らないでくれます!?」「お兄さんだなんて他人行儀な呼び方ではなく、ぜひ高明と」「よ、呼ぶわけないでしょう!?刺されたらどうするんですか!?」「お義兄さんでいいんじゃない?」「それ多分漢字違いますね!!ちょ、誰かこの兄弟黙らせて!!」