「いいなぁ〜香澄ちゃんと同棲か〜」「いいだろ?」「萩原さんも諸伏さんもマジで黙って」と頭を抱えた私は今日も今日とてイケメンが集まる喫茶店に連れ込まれていた。
サングラスにマスク、帽子にフード。長袖長ズボンの完全防備。「私が女だとバレたら刺される」と小さく縮こまる私を見て呆れた顔の松田さんが「刺されねーよ。お前その格好暑くねぇの?」とフードを取る。
「暑いに決まってるでしょ。バカなんですか」と返せば「バカはテメーだ。ぶっ倒れても知らねぇぞ」と帽子とマスクを奪われて、あれよあれよと言う間にサングラスも持っていかれる。
「返してください」と手を伸ばせば「これだけ返してやるよ」とサングラスを頭に乗せられて「ぐぬぬ…」と唸る。「諸伏ちゃんは同棲で、陣平ちゃんはお揃いのサングラスか〜」と笑う萩原さんの言葉にハッとして、松田さんを見ればニヤリと悪戯っ子のような顔で笑われる。
な、なんて事してくれるんだこの男…!「これもいらない!!!」とサングラスを取れば「いいの?顔バレしちゃうよ」と諸伏さんが楽しそうに笑うから「もうやだ…この人たち…」と両手で顔を覆ってしくしく泣く。
狙われているのなら外に出歩かない方がいいのでは?むしろその方が刺される心配も無くて安心だし!いいじゃん!そうしましょうよ!と積極的に軟禁と言う名の引きこもり生活を所望したが、それは安室さんによって却下された。
「突然あなたが姿を消したら、それこそ怪しまれるでしょう。あなたはいつも通りに生活してください」とバッサリ切り捨てられてしまい泣く泣く諦めた。「全然いつも通りの生活じゃない…前にも増してイケメン度が高い…密度が無理…」と文句を言う私に「相変わらずですね。香澄さん、チーズケーキはいかがですか?」と安室さんが笑う。
「たべます」と返事をすれば「チョロすぎだろ」「食べ物に釣られがちだよね」「こういうとこが可愛いんじゃん」と私を見て三人が笑い合うからギロリと睨みをきかせる。「食べ物に罪はありません。イケメンであるあなた達は罪ですけどね!!!」と言い切ってふんっ、とそっぽを向けば三人から益々楽しそうな笑い声が飛んでくる。
ぶすりと唇を尖らせて不満そうにする私の元にケーキを持ってきた安室さんが「そういえば、ずっと気になってたんですけど…香澄さんはどうしてそこまでイケメンが嫌いなんです?」と首を傾げる。
「確かに」「聞いたことねぇな」と納得する萩原さんたちに「……大した理由じゃないですよ」とそっぽを向く。本当に、大したことじゃない。ずっと昔のことだ。いい加減忘れてしまえばいいのに、いつまでも引きずってる私が悪いだけだ。
目の前のチーズケーキにフォークを刺して一口食べる。何となく微妙な空気が流れている気がして視線を上げれば、全員が心配そうな顔で私を見ていて思わず眉間にシワが寄った。
え、いや、そんな心配されるほどのことではないんですけど…と思いながらため息を吐いて「本当に大したことじゃないですよ。聞いても腹の足しにもならないし、酒の肴にもならないような、しょうもない昔話です」と呟いて、もう一口チーズケーキを頬張る。
うん、やっぱり美味しい。アイスティーで喉を潤してから前置きの通り、何の面白みもない私の昔話を、ぽつりぽつりと話し始めた。