ヤバい奴に狙われていると安室さんが言っていたけれど特に何も起きないし気のせいでは〜?と調子に乗っていた私を殴りたい。まんまと攫われて、まんまと知らない場所だった。怖すぎて涙出てきた。
「手痛いし足も痛いし帰りたい…」とべそをかく私は後ろ手に縛られて、足も同じように縛られていた。冷たいコンクリートの床に転がされて、人の気配も無い。ほらだから生きてる人間が一番怖いって言ったじゃん。
しくしくと涙を流して無様に転がっていれば突然外が騒がしくなる。ビクリと肩を震わせた私を更に怯えさせるように大きな音を立てて扉が開く。ぞろぞろと入ってきた真っ黒な格好をした男の人たちにギロリと睨まれて、あまりの恐怖に「ひぇっ、」と声が漏れた。
「コイツがあの爆弾の構造を知ってるって?」と男の一人が私を見る。一体何の話ですか。「おい、知ってるならさっさと全部吐け」と髪の毛を掴まれて無理やり顔を上げさせられる。
「し、しらない…」と小さな震える声で返せば「ア゛ァ!?」と凄まれる。「な、なんのはなしか、わかんないです…っ、」と泣きながら返事をすれば「テメェがあのショッピングモールで解体した爆弾だよ。知ってること全部教えろ」と益々髪の毛を強く引っ張られてぼろぼろと涙が出る。
「わ、わかんな…っ、しらない、ごめ…っなさい、」と泣きながら返せば髪の毛を掴んでいた手が離れて頭がコンクリートの床にゴン、とぶつかる。痛い。無理。もうなに、私が何をしたっていうの。
「わざわざ攫ってきたのに何の役にも立たねぇじゃねぇか!」と機嫌が悪くなったらしい男が苛立ったように声を荒げたかと思った瞬間、体が吹っ飛んだ。文字通り、ボールが飛ぶようにぽーんと、飛んだ。全身に走った痛みと、お腹への強烈な痛み。
「ぅ、え…っ、」とえずいて、痛みを逃がそうと体を丸くする。なに、何が起きたの。くるしい、いたい、いきができない。「ぇ…っげほっ、げほ、げほっ、」と何度も咳き込む私に八つ当たりをするように男の足が何度も体を蹴る。
「チッ、使えねぇな」と舌打ちが聞こえて、カチャリと聞き慣れない音がした。薄らと目を開けると私に向けられる黒い、鉄の塊。本気で終わったと思った。私、刺されるんじゃなくて、撃たれるんだ。
ぼんやり思いながら静かに目を閉じる。体を襲うであろう痛みに耐えるようにぎゅっと唇を噛み締めた瞬間だった。先程よりも遥かに大きな音を立てて扉が吹き飛んで、誰かが立っているのがぼんやり見えた。
「テメェ…!バーボン!何しに来やがった!」と怒鳴り声がして「何って、掃除ですよ。……あなた達のね」と聞き覚えのある声。ガシャン、ドカン、バタン。大きな音が何度も響いて床にぺたりとくっ付けた耳から振動が伝わってくる。
誰かの足音と、抱き起こされる体。遠くで聞こえる声は、何度も聞いていた声のような気がする。目を開けたいのに、目が開かない。体も、頭も、全部が重くて、抗うことなく私は意識を手放した。