(Side:降谷)
「香澄ちゃんが攫われた!」と駆け込んできたヒロの言葉にゾワリと背筋が粟立った。長年追っていた事件の解決に繋がる重要な事件。その鍵を握ってしまったのは、香澄だった。だが正しくは、鍵を握ったと思われてしまった、だ。
香澄が遭遇した爆弾事件。解体をしたのが香澄だったと、どこかから情報が漏れ出てしまった。爆弾の構造を香澄が知っていると勘違いをした組織の末端構成員たちが躍起になって香澄を探していることを分かっていたからヒロに護衛を任せていた。
が、起きて欲しくなかった最悪の事が起きてしまった。「悪い、ゼロ…ッ、ほんの一瞬、電話で数歩離れただけだったんだ。まさか手の届く範囲に俺がいる場所で事を起こすとは思わなかった…!クソッ…!油断した。本当にすまない!」と頭を下げたヒロの肩を叩く。
「反省も泣き言も後だ。とにかく彼女の居場所を探る。もしもに備えてアイツらにも連絡を入れておいてくれ。僕は先に行く。バーボンとして動けば多少は情報も得られるからな。頼んだぞ、ヒロ」と指示を出して駆け出す。
そこからはあっという間だった。攫われた彼女がいる倉庫を特定し、ヒロたちに連絡を入れて扉を蹴破った。倉庫内の奥で小さく丸まってひゅうひゅうとか細く息をする香澄の体は傷だらけ。
時折呼吸が苦しいのか咳き込んでは小さく唸る。怒りで短絡的な動きを繰り返す男たちを容赦無くなぎ倒していれば、遅れてやってきたヒロたちが倉庫内に駆け込んでくる。
「先に向こうを頼む!」と視線だけで香澄を指せば目を見開いたヒロと萩原が駆け寄っていく。「〜〜ッテメェ!!」と怒りに身を任せたまま敵の一人を殴り飛ばした松田と背中を合わせて敵に対峙する。
「おうコラ、何の説明も無しにヤベー案件に首突っ込ませてんじゃねぇぞ。首席様よォ」と頬を引き攣らせる松田に「ははっ、悪かったよ。こっちにも色々あったんだ。これが終わったら話せるところはちゃんと話す」と返して拳を握り締める。
香澄の状態はあまり芳しく無いようで、ヒロと萩原が何度も香澄を呼ぶ声が響く。「さっさと終わらせて、アイツ運ぶぞ」と呟いた松田に同意するように「ああ、そうだな」と返して再び拳を振るう。
巻き込みたくなかった。危険なんて縁の無い場所で笑っていて欲しかった。彼女をこんなにも危険な目に遭わせたのは他の誰でも無い、僕だった。