「初めまして、降谷です」と茶目っ気たっぷりに笑った安室さん、もとい降谷さんに「ぇぇえええ!?!?」と驚きで声が出た。「えっ、あむ、えっ…?」と混乱する私に「順を追って説明しようか」と降谷さんがくすくすと笑う。
「……つまり、安室さんは降谷さんで…、降谷さんは安室さん…?」と怪訝な顔をした私に「そうなんだけど…ちゃんと分かってないだろ、君」と降谷さんが呆れたように笑う。安室さんの時の物腰柔らかな雰囲気はどこにもなくて、何となく違う人と話をしている気分になる。
「し、知らない人みたい…」と呟けば「そう思ってもらう為に降谷とは全く違う性格を準備してたんだ。作戦成功だな」と降谷さんがくすくす笑う。「でも、安室さんよりも降谷さんの方が萩原さんたちの友達ですって紹介されて納得できる気がします」と一人で勝手に納得していれば、降谷さんは目を大きく見開いてから嬉しそうにくしゃりと笑う。
「それは…ちょっと恥ずかしいけど、嬉しいよ。ありがとう」と照れたように笑う降谷さんに「……アレですね。でも降谷さんも結局のところ顔がイケメンであることに変わりは無いので…外ではあんまり近付きたくないですね…」としみじみ言えば「君は本当に…なにも変わらないな…」と苦笑いで返される。
「降谷さんレベルで変わってる人の方が珍しくないですか。偽名なんて早々使わないですよ」と返せば「そういう意味じゃないよ」と即答されてしまい首を傾げた。何??どういう意味??と考えていれば「ああ、そう言えば。コナンくんから手紙を預かってきたんだ」とfryさんが思い出したように手を叩く。
「コナンくん?なんでわざわざ手紙なんか…」と呟けば「ご家族と一緒に海外で暮らすことになったらしくてね。つい先日、日本を発ったんだ」と返されてしまい、ぽかんと開いた口が塞がらない。
まだお礼も何も言えてないのに、と思いながら降谷さんが差し出してくれた手紙を受け取って恐る恐る封を開ける。『香澄さんへ。挨拶も出来ないままお別れになっちゃってごめんね。安室さんたちとちゃんと仲直りできた?香澄さん、変な所で頑固だから、意地張っちゃダメだよ』と書かれた手紙に「小学生に心配されてる成人女性って…」と思わず苦笑いが零れた。
『香澄さんともっと仲良くなりたいって思ったのは本当だよ。でも、仲良くなる前にお別れしなきゃいけなくなったのも本当。嘘じゃない。だから、僕の親戚の新一兄ちゃんに香澄さんと仲良くしてあげてってお願いしておいたよ!』と途中から風向きが変わった。
「……ん?」と首を傾げた私に降谷さんが「どうした?」と首を傾げるから「いや、なんでも…」と返して再び手紙に視線を落とす。『僕とすっごく仲良しの人で、香澄さんとも是非仲良くなりたいって言ってたから、大丈夫だと思う!体には気を付けてね。コナンより。』と書かれた手紙をぱたんと折り畳んで封筒にしまう。
……つまり?コナンくんの代わりに?コナンくんの親戚の新一くんとやらと仲良くしろと?「ど、どういうことだよ……」と頭を抱えた私に降谷さんが「友人からの手紙を読んで頭を抱えることあるんだ」とけらけら笑っていて思わず「わ、笑い事じゃないんですよ……」とため息が出た。
仲良くしてね!と言われても、そもそもその新一くんとやらを知らないんだが?と難しい顔で封筒を見つめていれば「それと、もう一つ」と降谷さんが声を上げる。「君に会いたいって言う人がいてね。会ってくれるかい?」と悪戯っ子のような、何かを企むような顔で笑った降谷さんに嫌な予感がした。
「あっ、いや、大丈夫です。結構です。遠慮します。お気遣い無く」と手のひらを向けて全力で拒否するけれど「ははっ、そう言わずに。コナンくんからも言われたんだろう?仲良くしてくれって」と降谷さんが笑うから「きょ、共犯じゃないですか!!」と驚きで目を見開く。
待って待って待って。コナンくんからの手紙を降谷さんが持ってきたのはそういうこと!?中身も全部分かった上で…ってこと!?信じられない!!「僕はコナンくんに手紙を渡して、彼を紹介して欲しいと言われただけだよ」と肩を竦めた降谷さんに「な、なんて人……!」とわなわな震えるけれど、降谷さんは何処吹く風だ。
そして、目の前に連れてこられたのはとびきり面の良い男の子。「う、うわぁ……コナンくんにそっくり……遺伝子すごい……むり……」と両手で顔を覆ってしくしく泣けば「初めまして、香澄さん」と困ったような、呆れたような顔で新一くんがふわりと笑う。
「やっぱり君が新一くんか!!コナンくんのバカ!!最後の最後にとんでも爆弾落とすんじゃないよ!!超イケメンじゃん!!」と声を荒げた私を見て降谷さんと新一くんが声を上げて笑った。