食べ物に釣られたわけじゃない

萩原さんに呼ばれた時点でおかしいと思うべきだった。目の前でにこりと微笑んだ諸伏さんを見て「何で諸伏さん連れて来るの!?この人たちもうやだぁ!!また騙された!!」と泣いた。本気で。

「え、俺歓迎されてなくない?大丈夫?」と私と萩原さんを交互に見る諸伏さんに「大丈夫。いつもの発作だから」「基本相手が誰でもコレだから」と萩原さんと松田さんがメニューを見ながら雑に答える。

「イケメン限定だって言ってんじゃん!!!」とテーブルに拳を叩きつければ「じゃあ褒められてる?」と諸伏さんが楽しそうに首を傾げてくるから「褒めてますよ!!だからもうほんと帰って…うぇぇん…」と両手で顔を覆う。

「泣いちゃった…」としょんぼりした諸伏さんの横で「このくだり前もやったな」と松田さんが呆れた顔をして「前どころか毎回やってない?」と萩原さんが首を傾げる。毎回やってるって分かってるなら、そろそろ泣かせない努力をして欲しい。

「えっ何?萩原も松田も毎回泣かせてるの?」と驚いた顔で二人を見た諸伏さんに「言い方」「人聞きが悪すぎるね」と二人が怪訝な顔をする。心外です、と言わんばかりの表情にこちらが驚いてしまう。

「大体合ってますよ!!毎回毎回何なんですか!?」と起これば「今度はキレてる」「情緒不安定か」と二人は楽しそうに笑っている。怒ってる人が目の前にいるのに大変だね、で笑い飛ばすのはどうかと思うよ。

ジト目で二人を睨み付けていた私の前に、萩原さんがメニューを差し出してくる。「まあまあ落ち着いて。あっ、ほらここのココアはマシュマロ乗ってるって。飲みたくない?」と尋ねられて「……のみたい」と素直に返す。

そんな萩原さんに乗っかって「お、今日のおすすめ、チーズケーキだとよ」とテーブルの上の可愛らしいポップを指差した松田さんに「……たべる」と返せば「食べ物で釣られてる…」と諸伏さんが小さな声で呟く。聞こえてますよ。

「チョロ可愛いでしょ。諸伏ちゃんもすぐ慣れるよ」とくすくす笑った萩原さんの声もちゃんと聞こえてます。「慣れるかな…」と苦笑いを零した諸伏さんだったけれど、二人がいるのも相まってあっという間に慣れてしまった。非常に遺憾である。
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