強盗事件が怖くない訳ない

たまたまだった。本当にたまたま、偶然訪れたお店で発生した強盗事件。パァン!と響いた破裂音に腰が抜けてかたかたと震えていれば、犯人に目を付けられてしまい腕を掴まれてしまう。怖すぎる。無理、ほんとに無理。

恐怖で引きつった喉からは情けない音が零れるだけで、悲鳴なんて上げられない。一人でなんて立っていられないほどに体はガタガタ震えているのに「殺されてぇのか!!!」なんて耳元で叫ばれたら、震える足はしっかりと自分の体を支えていた。

これが火事場の馬鹿力ってやつか…なんて現実逃避をしてみても状況は良くならない。頭に突き付けられた銃口に恐怖で目を閉じた瞬間だった。顔の横を通り抜けていった風と、何かがぶつかる音。

首に回っていた手が離されて「確保ォ!!!」と言う大きな声と共に響く足音。へなへなと足から力が抜けてへたり込んだ私に松田さんが駆け寄ってくる。「ッおい!無事か!?怪我は!?」と声をかけられて、ぽろぽろと涙が溢れる。

「し…っしぬ、しぬかと、おもったぁぁ…!こわかったぁぁ…!」とえぐえぐ泣きじゃくれば「ったく…よく頑張ったな」と松田さんがぐっと抱き寄せてくれる。泣き顔を見せたくなくて、松田さんの胸元に顔を押し付けて泣きじゃくりながら文句を言う。

「も、なんなんだよぉ…かいものにきただけなのにっ、なんで、なんでまきこまれるのぉ…っ、!しかもっ、しかもまつださん、いるし…っ、これだからいけめんはぁぁ…!」とぎゃんぎゃん文句を言う私に「結局それかよ」と松田さんは呆れたように笑って、あやす様に私の背中をとんとんと叩いた。

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「香澄ちゃん無事!?生きてる!?」と物凄い勢いで部屋に入ってきた萩原さんが、思い切り肩を掴む。「ち、近い近い近い!!近い!!離れてください!!わぁあっ!?」と萩原さんから逃げるように体を逸らしたのが間違いだった。

座っていた椅子がぐらりと傾いて体がぐるんとひっくり返る。どたん、と大きな音がして「いっ、た…ごめん、香澄ちゃん大丈夫…?」とすぐ近くから聞こえる萩原さんの声。恐る恐る目を開けると想定していた通りの最悪の絵面。

「〜〜〜ッ!?!?だ、大丈夫じゃないです!!は、早く離れてください!!」と半泣きで私の上に覆い被さるようにしている萩原さんに抗議すれば「香澄ちゃん、顔真っ赤じゃん。なぁに、照れてんの?」とニヤニヤ笑いながら萩原さんが距離を縮めてくる。

「ぁ…っあぅ…ちが、ば、ば…っ、ばかぁぁああ!!!」と騒いでいれば扉が開いて伊達さんが顔を覗かせる。「だ、だてさぁぁん……」と震える声で名前を呼んで、たすけて、と縋るように見つめれば伊達さんは驚いたように目を見開く。

「萩原、両手をあげて今すぐ香澄から離れろ…」と呆れたように額を押さえた伊達さんに「まだ何にもしてないって。ひっくり返った香澄ちゃんが怪我しないように支えてあげただけだよ」と両手をあげて降参のポーズをとった萩原さんが私の上から退く。

「原因は全部萩原さんじゃん!!ばか!!ばかーー!!」と伊達さんの後ろに隠れてぴいぴい文句を言う私に萩原さんはけらけらと笑いながら「元気そうで良かったよ。陣平ちゃんからめっちゃ泣いてたって聞いて、心配してたんだ。」と柔らかく微笑む。ちょっと松田さん、何で全部バラしちゃうの。許せない。
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