本気なのが一番怖い

「良かった…生きてる…」と出会い頭に私の肩を掴んでまじまじと顔を覗き込んできた諸伏さんに感じたデジャヴ。「近いって言ってるじゃないですか!!何なんですかアンタたちマジで!!」と諸伏さんから逃げるように足を引く。

いつの間にか後ろにいた安室さんに「おっと、」と支えられてしまい、前門の虎後門の狼。私はどうしたら良かったんですか。はい終わり。サヨナラグッバイ私の平穏な暮らし。「大丈夫ですか?」と優しい顔で微笑む安室さんに「たった今大丈夫じゃなくなりました……」と両手で顔を覆ってさめざめと泣く。

「えっ」と固まった安室さんに対して「またそうやって…」と一切気にしていない様子で「元気そうで良かったよ。アイツらから事件に巻き込まれたって聞いて、心配してたんだ」と私の頭をぽんと撫でて柔らかく笑った諸伏さんに今度こそ卒倒するかと思った。

「も、諸伏さんが一番怖い!!」と叫んで安室さんの背中に隠れれば「えっ」と今度は諸伏さんが固まる。萩原さんや松田さんは私のリアクション見たさにわざとちょっかいをかけているのが分かっているからある程度割り切れる。

伊達さんは私の様子を伺いながら声をかけてくれる優しさがあって且つ恋人がいるので最近はちょっと平気になってきた。安室さんも萩原さん達と同じタイプではあるけれど割と早い段階で「冗談ですよ」と笑いながら引いてくれるので全然マシだ。

問題は今私の目の前にいる男。「揶揄うとかじゃなくて本気なのが怖いんですよ…!」と諸伏さんを見れば、彼はきょとんとした顔で首を傾げる。なるほど、自覚症状無しか。有罪だ。

私のリアクションを楽しむ訳でもなく、そういうものだと丸ごと全部受け入れた上で私を甘やかそうとしている。「一番刺されるやつじゃないですかぁ…!この街の事件発生率舐めないでください!私なんてすぐグサッとやられちゃうんですから!」と安室さんの背中に隠れながらしくしくと顔を覆う。

「アイツらも俺もいるし、何かあってもちゃんと守るよ。大丈夫。だから俺の事見て泣きながら逃げるの止めて?」と困ったような顔で私の顔を覗こうとする諸伏さんから逃げようと安室さんを盾にする。

「来ないで」「やだ」「私もいやですけど!?」「お二人とも僕を挟んで痴話喧嘩は止めてください」「きゃーー!?なんて恐ろしいこと言うんですか安室さんの裏切り者!!」「僕は一言もあなたの味方になったなんて言ってませんよ」「は、背水の陣…!?」「アイツらもいたら四面楚歌だね」「おっっそろしいこと言うこの人!!やだもう!!」「ほんとに面白いな、この子」「もう帰る!!ばかーー!!」

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ここ最近のイケメン遭遇率は異常だと思う。「…哀ちゃん、背水の陣からどうやって逃げたらいい…?もしくは四面楚歌…」と両手を組んだ私を見て小さな可愛い友人は「はぁ?どっちも逃げ道ゼロじゃない。潔く諦めなさい」とため息を吐いた。

「そこをなんとかぁぁ…!」と食い下がれば「どこか一箇所突破するか、上に逃げるかしか無いんじゃない?」と面倒そうな顔をしながらも解決策を提示してくれる。こういう何だかんだ甘い所が大好きだよ。

「一点突破は無理だけど上か…上はありかもしれない…」と考え込んだ私を見て、一瞬目を見開いた哀ちゃんは「ありじゃないわよ。貴方どうやって上に逃げるつもりなの?」と最もな意見を私に投げてきた。

「哀ちゃんが上って言ったんじゃん!」と顔を覆って泣けば「方法としてあげただけよ。実践しろとは言ってないわ」とため息交じりに返されてしまい「…ほんとだ!?」と驚いてしまった。

「どうせ貴方のことだからあの人たちから逃げたいとか言うんでしょ」と再びため息を吐いた哀ちゃんに「そう…!そうなの…!あの人たちやだって言ってるのに着いてくるの…!」と泣きながら縋りつく。プライド?ありません。

「貴方が律儀に全部リアクションするからでしょう。一回本気で無視してみたら?」と楽しそうに笑った哀ちゃんの提案に「えっ」と声を上げてしまう。そんな事考えたこともなかった、と固まった私に哀ちゃんはくすくす笑う。

「貴方が面白い反応しなければ、あの人たちも諦めてくれるんじゃない?」と肩を竦めた哀ちゃんに「それだ!aiちゃん天才!私頑張るね!ありがとう!」と俄然やる気になって立ち上がる。

「ありがとう、哀ちゃん!」と晴れやかな表情で哀ちゃんと別れた私は、私が帰った後、哀ちゃんとコナンくんが二人で私の話をしていたことなんて知る由も無い。

「で?そのアドバイスを聞いて実践しに行ったって訳か」「ええ、可愛い人よね」「お前なぁ…その程度であの人達が退くと本気で思ってんのか?」「まさか。思ってないわよ。私は、そろそろ自分を低く見積もりすぎるのが香澄さんの悪い所だって気付いて欲しいだけ」「にしてもやり方ってもんがあるだろ…」
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