「ねぇ、ご飯ちゃんと食べてる?」と冷蔵庫を覗いて怪訝な顔をした諸伏さんに「ちゃんとかどうかは分かんないですけど、一応食べてますよ」と返せば「……今日の朝とお昼は?」と聞かれる。今日の朝と昼…?何食べたっけ、と少し考えてから「朝はコーヒー飲んで、昼は…コンビニでサンドイッチ買って食べましたよ」と返せば「それだけ?」と首を傾げられる。
「あ、チョコ食べた」「それはご飯じゃないでしょ」と額に手を当ててため息を吐いた諸伏さんが「で?今日の夜はどうするつもりだったの」と眉間に皺を寄せるから「え、ラーメン?」と返せば「これ?」とキッチンに山積みにされたカップラーメンが指差される。
「そうそう。今日は味噌の気分でした」と返してスマホに視線を落とす。「……それなのにこの時間でまだご飯食べてないの?」とスマホを取り上げられて怖い顔の諸伏さんが私を見る。
「もうちょっとしたら食べますよ…」と返せば「もうちょっとって、もう夜の10時だよ?これからご飯なんて体に悪いでしょ。しかもカップラーメンとか、三徹目のゼロじゃないんだから」と腰に手を当ててぷりぷりと怒られる。
私よりも三徹目の限界降谷さんを何とかする方が先じゃないですかね。「まあ一食食べなくてもタヒなないし…」と呟いた私に「すぐには死ななくても、死ぬ可能性が高くなるでしょって意味。俺の言いたいこと、香澄ちゃんならちゃんと分かってるでしょ。コラ、顔逸らさない。こっち見て」と顎を掴んでぐいっと無理やり視線を合わせられる。
「ごめんなさい」と渋々謝れば「冷蔵庫にも冷凍庫にも色々入れてるから明日からちゃんと食べてよ。無くなる頃に見に来るからね」と言われてしまい、げっと声が出る。「そんな、そこまでしなくていいです…」と遠慮するけれど「そこまでしないと香澄ちゃん食べないでしょ」と素気無く返されてしまい、もう逃げ場が無い。
「別に、私がご飯食べようが食べなかろうが、諸伏さんに関係ないじゃん」とため息を吐いてふいっとそっぽを向く。元々干渉されるのは好きじゃない。母親のように口うるさい諸伏さんに、ほんのちょっぴり面倒だなと思ってしまったのもあった。
そんな私に「関係あるよ」と優しい声で言った諸伏さんが、ソファに座っていた私の前にしゃがみ込んでぎゅっと両手を握られる。「だって俺、香澄ちゃんのこと好きなんだもん。そりゃ気にしちゃうじゃん」と照れくさそうに笑われて「……は?」と固まった。
「俺、何でもない子にご飯作ったりしないよ」と悪戯っ子のような顔で笑った諸伏さんがスッと私の頬に手を伸ばすからビクッと肩を跳ねさせれば「知らなかった?」と目を細められて、完全に気分は蛇に睨まれた蛙だった。
「し、しらない…」と小さな声で返せば「じゃあ、これから知ってよ。俺が、香澄ちゃんのことが大好きで、大事にしたいって思ってることも、俺がいないとダメになっちゃえばいいって思ってることも。全部、これから知って?」と親指で頬をするりと撫でられる。
ごくりと唾を飲み込んで「な、に、それ…」と小さく声を漏らした私に「ん?告白」と語尾にハートマークが付きそうなほどに甘ったるく微笑んだ諸伏さんが距離を縮めてくる。「香澄ちゃんは、俺のことどう思ってる?好き?嫌い?」と笑う諸伏さんにきゅっと口を噤む。
その質問の仕方は、ズルいと思う。「きらいじゃ、ない」と何とか返事をすれば「じゃあ、すき?」と眦をとろりと下げた諸伏さんが首を傾げるから「……そういうことに、しておきます」と可愛くない返事をする。
そんな私に「やった」と嬉しそうに笑いながら諸伏さんがこつりと額をぶつけてくるから、胸が苦しくなった。