久しぶりに降谷さんに出会ったと思ったら事件現場だった。それもちょっとヤバめの。「降谷さん、前線から退いたとか何とか言ってませんでした?」と首を傾げた私からスッと目を逸らして「当社比ってやつだ」と小さな声で呟く。つまり大嘘ですね。
「私の巻き込まれ率だけの話では無いですよね、これ」とため息を吐いた私に「この町の発生率が問題であることは間違いないが、君の巻き込まれ率も相当だぞ」と困った顔で私の頬を撫でた降谷さんに首を傾げる。
「何ですか?」とその手をびしりと叩き落とせば「傷、付けてしまったな」と申し訳なさそうに眉を下げるから「あぁ、やっぱり。さっきからピリピリすると思ってたんですよね」とケロリと返す。親指でぐいっと拭えば指先に赤が付く。
まあ、これくらいならすぐ治るでしょ。「平気ですよ、これくらい。それよりも、私はいつまでここに隠れてればいいんですか」と降谷さんを見れば「……僕が戻って来るまでここにいてくれ。声や音は絶対に出すな。あと、僕以外の誰かがここに来ても絶対に反応しないこと」と険しい顔で念を押される。
「わかりました」と素直に頷けば「僕は、いつも君を危険に晒しているな」と泣きそうな顔をされるからバチリと両手で降谷さんの頬を叩く。「しっかりしてください。守ってくれるんでしょ、おまわりさん」と降谷さんを見つめれば目を丸くしてからふにゃりと笑って「やっぱり、ダメだな」と呟くから「はぁ?」と首を傾げてしまう。何がダメなんですか。
「僕と一緒にいると、いつも君を傷付けてしまうから…一緒にいない方がいいと思ってたんだ」と降谷さんが私の頬を両手で包み込んで、そのまま額を重ねた降谷さんが目を閉じる。
「でも、ダメだな。君に、僕の傍にいて欲しい。好きなんだ。理屈じゃなく、本能が君を求めてる」と懇願するような口ぶりに思わず息を飲む。驚きで離してしまった手を追いかけるように降谷さんの目が開かれて、視線が交わる。
「好きだよ。おまわりさんだからじゃなく、降谷零として君を守りたいんだ」と降谷さんが言葉を紡いで、鼻先が触れる。心臓がバクバクと音を立てて、手が震える。突き飛ばしてしまえばいいのに、それができない。
「いかなくて、いいんですか」と降谷さんの胸元を押すけれど、力の入っていない手はただ胸元に手を添えただけのような姿勢になる。「そうだな。君を守るために、行かないと」とキスをするように鼻先をすり、と押し付けられる。
「好きだよ、香澄。ちゃんと君を守りきって、もう一度伝えに来るから。ここで待ってて」と私の唇を親指でするりと撫でた降谷さんが甘く、眦を下げて微笑む。
「そういうの、死亡フラグって言うんですよ」と降谷さんの胸元をビシリと叩けば「僕がタヒんで君が泣いてくれるならちょっと見てみたい気もするな」とくすくす笑われる。縁起でもないこと言わないでください。
「絶対泣いてあげない」と眉間に皺を寄せれば「冗談だよ。ごめん」と降谷さんが肩を竦める。「けがしたら、きいてあげないから」と緊張で声を震わせながらふいっとそっぽを向けば「任せろ。かすり傷一つ無く戻ってくるよ」と嬉しそうに笑った降谷さんが私の額にキスをする。
バッと距離を取った私に「ははっ、行ってくる」と悪戯っ子のように笑って走って行った降谷さんに勝てる気はしなかった。