届くはずの無い手紙、だったはずなのに

仕事に行って、帰ってきたら自宅が無くなっていた。私も何が何だかさっぱりだった。「ちゃっぴー…家が爆発した時にやらなきゃいけないこと教えて…」と現実逃避をしながらスマホに話しかけてみたけれど素気無く返された。悲しい。

ようやく引越しが完了し、新居へ向かうために乗り込んだ電車で私の耳に入ってきたのは耳を疑うアナウンスだった。「次は、米花駅、米花駅です。お出口は〜」と当然のように流れてきたアナウンスに「…え、」と声が漏れる。

私が降りる駅の名前はそんな名前ではなかったはず、と新居の住所を確認すれば当然のように『米花町』と記されていて首を傾げる。「う、嘘ぉ…」と若干引きながら停車した電車を降りる。

スマホのナビに新居の住所を入れると普通にナビが始まったし、改札も普通に通れてしまった。ナビを見ながらきょろきょろと辺りを見回していると「おい嬢ちゃん、大丈夫か?」と声をかけられる。

ビクリと肩を跳ねさせて「あっ、すみません…!ちょっと、ナビ見てて…!」と振り返った私の目の前にいた人を見て、思わずぽかんとしてしまった。「驚かせて悪いな。困ってるみたいだったから…って、おい、本当に大丈夫か?」と私の顔を覗き込む人に、見覚えしか無かったから。

わたし、本当にトリップしちゃったってこと…?と混乱する頭で必死に考える。目の見えにいる人は、恐らく…というか十中八九間違いなく伊達さんだ。じゃあ何か?まだ伊達さんが生きている世界線ってこと?と考えれば考えるほど分からなくなって「ぁ、いえ、ほんとに…平気です、はい、スミマセン…」と後退りをしてしまう。

一旦、逃げよう。と走り出そうと私の足を止めたのは「あれあれ、妻帯者がナンパかよ〜」と聞こえてきた明るい声。ギギギ、とブリキのおもちゃのようにぎこちなく声の方へ顔を向けて卒倒するかと思った。

よりにもよって、何で全員集合している所に遭遇するだなんて、レアどころの騒ぎじゃない。「道に迷ってそうだったから声掛けただけだっつーの」と困ったように笑った伊達さんと「あ、そゆこと?なぁんだ」と茶化すように笑う萩原さん。

松田さんも、諸伏さんも、降谷さんもいる。普通に、喋ってる。生きてる。なんかもう、全部夢でも何でもいいかも。そう思ったらぽろぽろと涙が溢れてきた。

「ぅえっ!?」と目を見開いた萩原さんの隣で「お前たち、何かしたのか?」と降谷さんが怪訝な顔をするから「た、確かに驚かせはしちまったが…!」「俺は何もしてませんけど!?」と伊達さんと萩原さんが慌て出す。

違うんです、と訂正しようとしたけれど、興奮と焦りでまともな判断が出来なくなっていた私は「死んでない、いきてる、」と考えていることが全て声に出てしまっていた。私の言葉を聞いて目を見開いた五人に「ごめ…っなさい、あの、ちがくて、っあ、れ、なみだ…とまんな、」と両手で必死に涙を拭うけれど、目の前でじゃれ合う推し達の姿に涙が止まらない。

「いきてて、よかった…っ、ごめんなさい、へんなこといって…っ、こまらせて、ごめ…っなさい、」とべしょべしょに泣きながら謝る私の肩を降谷さんがぎゅっと掴む。それから「君、もしかして女神様か?」なんて言うから驚きで涙が引っ込んだ。

めがみ、…はい?な、何の話ですか、それ。「わ、わかんない…です、」とずびずび鼻を啜りながら答えれば「俺たちに手紙送ったの、お前か?」と松田さんが私を見る。「て、がみ…?」と首を傾げてから引き出しの中にしまったまま爆発して炭になった手紙を思い出す。

ちょっっと待て。つまり、どういうことだ。あの恥ずかしい手紙のことを言っているのか。あれはだって、届く訳が無いもので…と考えたけれど、今彼らが目の前にいるということは、まさか……?と、サァッと血の気が引いて「ひ、ひとちがい、…じゃない、ですかね…?」と逃げ出そうとした私の前に諸伏さんが「これに心当たりある?」と一枚の封筒を差し出す。

見覚えのありすぎる封筒と文字。卒倒するかと思った。「〜〜ッ!?は、え、なん…っ、」と言葉を失う私を見て「やっぱり君が…」と降谷さんが呟く。ダメだ、もうこれ一回逃げよう。

人間でも情報過多でオーバーヒートするんだぁ…と他人事のように考えながら「ひ、人違いです!!サヨナラ!!」と踵を返して走り出した。誰か、何が起きてるのか教えて!
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