年月を経て思いは強く、深くなる

走って、走って、走って。目に入ったコンビニに駆け込んだ。余りの勢いに店員さんが「大丈夫ですか…?」と心配そうに声をかけてくれるから「だ、大丈夫です、すみません」と返して荒くなった息を整えようと深呼吸を何度か繰り返した。

心配そうに様子を伺う店員さんに苦笑いを返して、水とチョコレートを購入する。店を出て、スマホを開いて現在地から新居までのルートを検索すれば、徒歩30分と表記される。随分遠くまで走ってきてしまったみたいだ。

一口水を飲んで、チョコレートを一個口の中に放り込む。うん、ちょっと落ち着いた。さっき、私に声をかけてきたのは間違いなく伊達さんだった。萩原さんや松田さんもいた。何より驚いたのは諸伏さんと降谷さんが何の変装もせずに、普通に彼らと一緒にいた。

い、一体どうなってんだってばよ……。ナビを見ながら黙々と歩く。頭の整理が全く出来ない。そもそも、彼らはどうしてあの手紙を持っているんだ。あの手紙はあの日、私の部屋にあったグッズたちと共に炭と化したはず。

あっ、思い出したら泣けてきた。あんなにいっぱいあったのに…全部消し飛んだ…。ぶっちゃけ三日三晩マジで泣いた。結構ちゃんとショックだった。

閑話休題。あの手紙が、もし本当に私が書いたものだったとしたら。彼らは自分の死を、知っている?それとも、知った上で既に回避している?というか、私が本当にトリップしているのだとしたら、どの辺りの時系列なんだろう。

ぐるぐると考えながら歩いて、ふと思う。「いや、別にトリップしてたとして関わらなきゃいいだけなのでは…?」 ピコンと頭の上の電球が光った気分だった。な〜〜んだ簡単な話じゃないか。

ぱくりともう一つチョコレートを口にしてうん、と頷く。そうだよ。たまたま、偶然、ついうっかり米花町のマンションに住むことになっただけだ。一般市民として生活をすればいいだけで、何も難しいことはない。あの人たちに会ったことは忘れよう。

「道が分からなくて困ってた私に声をかけてくれた優しいお兄さんたちだった、ってことにしよう。うん、そうしよう」 難しいことは考えたくない。というか、あの激重感情が詰まった手紙のことなんて知らない。もう忘れよう。あれは、消し炭になった。

諸伏さんが私に見せたアレは気のせい。人違い。「今日の夜、何食べようかな」 なんて、思いながらナビを見て帰り道を黙々と歩く。考えることを止めた私は、彼らの執念に気付かない。

長い年月をかけて、膨れ上がった彼らの激重感情に振り回されることになるなんて、思ってもいなかった。今この瞬間が束の間の平和だと、一体誰が想像しただろうか。
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