可愛い王子様

「だてしゃぁぁあん!」と庁舎内を走る小さな体をぽすりと受け止めた伊達が「おう、元気だな」と笑って幼女の頭のうりうりと撫でる。抱っこをせがむように首に腕を回した幼女を軽々と抱き上げて「遊園地、楽しかったか?」と聞いてあげれば「あのね!あのね!」と大興奮の幼女が話を始める。

「そりゃ良かったな」と相槌を打ちながら聞いていれば、まん丸の目が更に大きくまん丸に見開かれる。「だてしゃん!おみあげ!」と手を上げた幼女に「お土産?」と伊達が首を傾げる。

「これね、けんちゃんとじんぺーくんがかってくれたの」と首からぶら下げたポシェットから出てきたのはクッキーの小袋。「だからねぇ、だてしゃんにもあげる!こんどいっしょにいこーね!」とキラキラした笑顔を向けてくる幼女を誰が突っぱねられようか。

「香澄ちゃんは優しいな!ありがとう!」と小袋を受け取った伊達がわしわしと頭を撫でてやれば「ふひひっ」と小さな両手が口元を押さえるように動く。「うれしい?」と聞いてくる幼女に「嬉しいに決まってるだろ。今度は一緒に行こうな」と伊達が返すから幼女の表情がパッと華やいだ。

別の日、今度は降谷と諸伏にお土産を渡すべく二人の元にやってきた幼女が「ひろくん!」と走り出す。ぽすっと腕の中に収まった小さな体を抱き上げて「こんにちは、香澄ちゃん」と諸伏が笑えば「こんちあ!」と元気なお返事。

それからちょっぴり恥ずかしそうに頬を染めながら「れぇくん、こにちわぁ…」と挨拶をするものだから、あまりの可愛さに「ん゛ん゛…っ、こんにちは、香澄ちゃん。ちゃんと挨拶ができて偉いね」と降谷が喉を鳴らす。

「あのね、きょうね、ゆーえんちいってね、くっきーね、」と興奮しすぎてしっちゃかめっちゃかになった話を降谷と諸伏はにこやかに聞いてあげる。ひとしきり話し終えて「それでね、おみあげね、これあげる!」とポシェットから出てきたのはクッキーの小袋。

萩原と松田がプレゼントだと買ってくれたクッキーをどうやら皆に分けてあげたいらしい。「本当?僕たちにくれるの?」と降谷が言えば「いいよぉ」と取れたように笑いながら降谷の手のひらにクッキーを乗せる。

「ひろくんも、これあげる」とポシェットからもう一つクッキーを取り出した幼女が諸伏の手にもそれを乗せる。「わ、美味しそうだね。ありがとう、香澄ちゃん」と頭を撫でれば「ひひっ」と楽しそうに口元を押さえた幼女がふにゃふにゃと笑う。

「ありがとう、香澄ちゃん。すっごく嬉しいよ」と降谷にも頭を撫でられて「へへ、いいよぉ!」と諸伏の胸元に額をぐりぐり押し付ける姿は完全に照れ隠し。真っ赤になったぷくぷくのほっぺたに降谷と諸伏の頬がふわりと緩む。

「今度は俺たちとも行こうね」と言う諸伏の言葉にガバリと顔を上げた幼女が目をまん丸にして「ひろくんとれーくんもいってくれるの!」と嬉しそうに笑う。「勿論。今度は僕にエスコートさせてくれるかな?小さなお姫様」と降谷が幼女の手を取れば「れぇくんがかすみちゃんのおーじさまになってくれるの、うれしい」と幼女の頬が緩む。

「じゃあ俺は香澄ちゃんの騎士になろうかな」と諸伏が笑えば「ないと?」と幼女がこてん、と首を傾げる。「そう。香澄ちゃんを危ないことから守る人のことだよ」と幼女の鼻をちょん、と人差し指でつつけば「おーじさまじゃないの?」とよく分からなかったようでむむ、と唇が尖る。

「ひろくんはおひめさまだからかすみちゃんがまもるの!」と腰に手を当ててふんっと鼻を鳴らした幼女の姿に「まだその設定生きてたんだ」「良かったじゃないか。可愛い王子様ができて」と二人がくすくすと笑う。

そんな姿を見て「りょーてにはなね!」と幼女が得意げな顔で言い出すものだから「ははっ!どこで覚えたの、それ」「あははっ!僕たちが花なんだな」と今度こそ耐えられずに吹き出した。
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