それは、絶対に違う

どうやら幼女の周りで不穏な動きがあるらしい、と聞かされて「どういうこと?」と首を傾げた萩原に諸伏が眉を下げる。「前に、萩原と一緒にいる時に香澄ちゃんが変な男に声をかけられた事件があっただろ」と口火を切った諸伏からの話に萩原たちは堪らず舌を打った。

あの日、捕らえた男が関わった事件を捜査している最中に発覚したのは、とある宗教団体との関わりだった。そして不運なことにその団体と、降谷や諸伏が追っている組織との間にも繋がりがあることが芋づる式に発覚。

加えて幼女の両親、および親族も、何らかの形で巻き込まれている可能性が高いということが分かってしまった。その宗教団体が表立った活動をしていないことから捜査は難航し、現時点でも正確な情報は掴めていないのだと語った諸伏はぐっと拳を握って悔しそうに顔を歪めた。

「…表立って調べるには情報が足りないし、どちらから探りを入れるにしても現段階では危なすぎて手が出せていないんだ」と続けた諸伏に「つまり、お前らが手をこまねいている間に香澄が危ない目に遭うかもしれねぇってことか?」と眉間に皺を寄せた松田が苛立たし気に舌打ちをする。

「なるほどな。それで俺たちにいつも通りを装って護衛して欲しいって魂胆か」と苦笑いを零した伊達だったが、内心では松田と同様に舌を打っていた。そして、誰よりも苛立ちと責任を感じていたのが萩原だった。

「……俺があの日、あの男と接触させちゃったのが不味かったってことだよね」と声を強張らせた萩原に諸伏が声を上げる。「違うよ、萩原。それは、絶対に違う」と目っ直ぐに萩原を見つめた諸伏が言葉を続ける。

「遅かれ早かれ、あの男は香澄ちゃんに接触してた。あの日、萩原がいなかったら、そのまま攫われてたかもしれないし、俺たちがこの事実に気付くこともできなかった。ゼロも言ってた。萩原と香澄ちゃんのお陰で、大きな事件が片付きそうだって。だから、絶対萩原のせいじゃない」と言い切った諸伏のお陰で萩原の肩から力が抜ける。

「そ、っか…それなら、いいんだけど、」と困ったように力無く笑った萩原に諸伏は眉を下げた。それから全員の顔を見て「どんなに些細な事でも良いんだ。香澄ちゃんの周りで何かあったら、すぐに共有して欲しい」と頭を下げた諸伏に、あの愛おしい命を守れるのなら喜んで手を貸そう、と全員が頷いた。
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