遅かれ早かれ表沙汰になってた

「事件が起こっている以上、良かったと言うべきでは無いんだろうが…今回ばかりは有難いな」と悪い顔をした降谷が「令状はこちらで用意する。このヤマは捜一から奪う形になるが構わないな?」と松田と伊達を見る。

「あぁ、それは好きにしてくれて構わん」と笑って頷いた伊達の横で「その代わり、理由付けて俺らは引っぱり出せよ。表向きの役者は必要だろ」と松田がニヤリと笑う。「それで言ったら爆処のエースである俺も出番ありそうじゃない?」と萩原がニコリと笑う。

その笑顔の裏に「俺を呼ばない訳が無いよな」と言う副音声が隠れていることに降谷が気付かないはずも無く苦笑いをしながら「善処はするよ」と返した。

「僕は立場上、現地には行けない。変装したヒロに現場の指揮は任せるから、君たちはその指示に従って動いてくれ」と言った降谷に続けて「まぁ指示って言っても大まかな物だけだから。基本的には皆の判断に任せるよ。暴走した萩原と松田を俺一人で止めるのは無理」と肩を竦めて諸伏が笑う。

「それは…俺も止められる自信ねぇな…」と苦笑いをした伊達と一緒に「僕も無理だよ」と降谷も苦笑いをする。「皆して俺らのこと暴れ馬みたいな言い方しちゃってさぁ、失礼だよね。ねえ、陣平ちゃん」とふざけた口調でおどける萩原にジト目を向けた松田が「お前は十分暴れ馬だろうが」と返す。一体いつから自分は暴れ馬ではないと思っていたのだろうか。

閑話休題。翌日、降谷によって整えられた盤面に萩原たちは立っていた。まさか一日で令状を用意して押しかけてくるとは思っていなかったようで、団体のトップは表情を引き攣らせていた。とは言え、好き勝手調べたいなら令状を持って来いと啖呵を切ってしまった上に、実際に令状を出されてしまえば頷かない訳にはいかない。

苦い顔をする団体のトップを横目に諸伏が指示を出す公安によって施設内の捜査が始まった。「一応、単独行動は控えてくれ。基本的には三人で動くこと。何かあったらすぐ共有して。人手が必要ならすぐに送るから」と言った諸伏に萩原たちが頷く。

昨日発生した事件と、公安が別件で追っている裏の事件、そして萩原たちが追っている幼女の行方。全ての鍵が、この施設内に集まっていた。事件は証拠が見つかりすぐに解決。団体内での幹部争いが拗れた結果、起きてしまったもの。

そして、その事件の証拠を探す上で出てきたのは数多くの不正の事実。「ここまで来ると、いっそ清々しいな」と苦笑いをせずにはいられない諸伏がいて、勿論インカムの向こうの降谷も状況を聞いて、堪らず額を押さえてしまった。

「ここまで杜撰な管理体制で、よくメスが入らなかったものだな」と大きなため息と共に吐き出された言葉に「まあまあ、遅かれ早かれ表沙汰になってただろうし、メディアに取り上げられて揉み消すのが難しくなる前で良かったと思おうよ」と諸伏が笑いながら返す。

「それは…まあ、そうだけど…」と返した降谷だったが、やはりため息を抑えきれずに再びため息を吐く。「事件の方は解決したんだよな?香澄ちゃんは?」と尋ねた降谷に「それが、アイツらからまだ連絡が無いんだ。こっちからも何度か呼びかけてはいるんだけど、応答が無くて」と諸伏が眉間に皺を寄せる。

「ヒロ、その場は一旦他の奴に任せて、様子を見てきてくれ」と言う降谷の指示に諸伏がこくりと頷く。「分かった。後でまた連絡する」と通信を切断した諸伏が外へ出れば、異様な静けさと生暖かい風が諸伏の不安を煽る。「何も、起きなきゃいいけど」と呟いた諸伏の頭上には真っ黒な雲が、ゴロゴロと不穏な音を立てた。
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