俺と、家族になろう

「本気で言ってるのか?」と目を見開いた降谷に萩原は静かに頷いた。「こんな事、冗談で言わないよ」と病室のベッドで眠る幼女の頭を撫でて「降谷ちゃんなら出来るでしょ」と言った萩原の泣きそうな顔に降谷はため息を吐いた。

「ご家族の了承は?」と尋ねた降谷に「これから」と返ってくるものだから、額を押さえずにはいられない。「そっちが先だ、バカ」と萩原の頭を小突いた降谷だったが、萩原の気持ちは分からなくも無かった。

「少し時間はかかるがこっちで書類は容易する。お前はその間にご家族に話は通しておけよ」と困ったような顔で優しく笑った降谷に萩原は「……うん。ありがとう、降谷ちゃん」と安心しきった顔で微笑んだ。

それから萩原は両親と千速に事情を説明して頭を下げた。幼女が自分の命を救ってくれたこと。大事な友人たちの命を救ってくれたこと。泣いていた幼女の手を一度離してしまったこと。もう二度と、幼女を泣かせたくない。

掴み直すことができた小さな手を、離したくない。ずっと一緒にいるって、約束したから。けんちゃん、と笑う無邪気な笑顔を失いたくない。「だから、お願いします」と頭を下げた萩原に、反対する人はいなかった。

あまりにもあっさりと得られてしまった承諾に萩原がきょとんと目を瞬かせる。「え、いや…もうちょっと、こう…あるでしょ…」と困った顔をする萩原に「反対して欲しかったの?」と母が笑うから「いや、それはそれで困るけど…」と萩原が戸惑いの声を上げる。

「昔のお前のヤンチャに比べたら可愛いもんだろう」と母と顔を見合わせて笑う父の隣では「正真正銘、私の妹になる訳だな」と千速も楽しそうに笑っていた。我が家族ながら順応度が高すぎやしないかと苦笑いを零した萩原だったが「ありがとう」と再び頭を下げた。

その翌日、萩原から「OK出たよ」とあっさりとした報告を受けた降谷は「さすが萩原の家族だな」と苦笑いを零しながら書類の準備を進めるし、事の次第を聞いた松田は「まぁ、だろうな」とケラケラ笑っていた。

だがしかし、萩原がどれだけ望んでも幼女がそれを望むとは限らない。一番大事なのは幼女の気持ちであって、萩原は幼女が望む通りにしてあげたいと思っていた。「香澄ちゃん、お話があるんだけどいい?」とベッドの上でぺたりと座る幼女の手を握り締めて萩原が優しく笑う。

「なぁに?」と萩原を真似るように首を傾げた幼女に萩原がくすりと笑う。もう一度幼女の手を握り直して「あのね、香澄ちゃんのお母さんとお父さん、ちょっと遠くに行っちゃってね、香澄ちゃんと一緒にいれないんだって」と優しく伝えれば、幼女が寂しそうな顔でこくりと頷く。

幼女の頬に手を添えて、親指で目元をそっと撫でて「それでね、香澄ちゃんが良いよっていってくれるなら俺と一緒にいて欲しいなって思ってるんだ」と笑いかければ、幼女がぱちりと目を瞬かせる。

「けんちゃんと…?」と呟いた幼女に「うん。俺と、家族になろう。怖いのも、寂しいのも、俺がやっつけてあげる」と言えばくしゃりと顔が歪んで「けんちゃん、ぎゅう…」って幼女が手を広げるから優しく抱き締める。

「嫌だった?」と背中を撫でながら尋ねれば「やじゃなぃぃ…」とぐすぐす鼻を啜る音が聞こえてくる。「ずっといっしょ…?けんちゃん、ほんとにいっしょにいてくれるの?」と不安そうな声で言う幼女に萩原はしっかりと頷いた。

「ずっと一緒だよ。約束」と笑って返せば、首に回された幼女の腕にきゅっと力が入る。何があってもこの手は離さない。そう誓って、小さな体を抱き締めた。
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