泣きそうな顔をしていた諸伏を見て私が守ってあげなければ!と幼女に思われてしまった諸伏は幼女に頭を撫でられながら「えんえんないよ、だいじょーぶ。香澄ちゃんがいるからね!」と慰められてしまい段々いたたまれなくなってきて白旗を上げた。
「香澄ちゃ〜ん、諸伏ちゃん元気になったって」と萩原が助け舟を出せば「ほんと?」ときゅるきゅるのおめめが諸伏を見つめる。「ほんと。よしよしってしてくれてありがとな」と諸伏が幼女の頭を撫でれば、得意げにふふんと鼻を鳴らして「まかせてぇ!」と胸を張るものだから松田が堪らず吹き出した。
そんな松田に目もくれずに何かを必死に伝えようとする幼女だったが、如何せん諸伏の名前が上手く言えない。「もりょ、もりょっぅし、」「今牛いた?」「いなぁい!けんちゃんしーっ!」「ごめんごめん」なんてやり取りをしながら一生懸命諸伏の名前を呼ぼうとする姿に「ヒロって呼んでくれ」と諸伏がふわりと笑う。
ぱちりと目を瞬かせてから「ひろくん?」と言いながらこてんと小さな頭が横に倒れる。「そう。俺の名前、景光って言うんだ」と諸伏の手が小さな頭を髪の毛を撫でつけるようにしてゆっくり撫でる。
「わかった!ひろくんね、あのね、香澄ちゃんのことは、香澄ちゃんってよんでね」とふくふくの手でほっぺたを押さえた幼女がくふくふと笑う。ご機嫌に笑う姿に「友達できて良かったなぁ」と萩原が頭を撫でて「泣き虫景光くんの王子様にでもなんのか?」と松田はくつくつ喉を鳴らして笑っている。
「おいおい、女の子相手に王子様なんて、」と言いかけた諸伏の言葉を遮り「わたしおうじさま!?じゃあひろくんはおひめさまね!」と幼女が立ち上がる。「あっいいんだ」「しかも俺がお姫様に…!?」「だーっはっはっはっ!クッソ似合わねぇ〜〜!!」「じんぺーくんわらわないで!」と部屋中に響く笑い声に死ななくて良かった、と諸伏は目尻の涙を静かに拭った。