ようやく諸伏の件が落ち着いて幼女に会いに来た降谷が「こんにちは」としゃがんで目線を合わせて微笑めばピシッと固まった幼女がゆっくり後退りをして萩原の足の後ろに隠れてしまう。「……えっ」「ゼロ何かしたの?」「初対面だが?」
萩原が「あんまり人見知りしないタイプなんだけどな…どうしたの、香澄ちゃん。ほら、こんにちはーって」と幼女の背中を押してやるけれど「や!やっ!やだけんちゃんだっこ!」と足にしがみついて離れてくれない。
「……ぶはっ、だーっはっはっはっ!ゼロお前何してそんな嫌われてんだよ!」と松田が堪えられないと言わんばかりに笑い転げるものだから「だから初対面だって言ってるだろ!?」と降谷が噛み付かないはずもない。
「うーん、どうしたんだろ。香澄ちゃん、ゼロ…じゃないや。このお兄ちゃん、嫌なの?」と諸伏が優しく声をかければ萩原の肩に埋められていた顔がそろりそろりとこちらを向く。
「ううん、こわくない」と首を横に振る様子を見て、今度は「じゃあ何か嫌なことでもされたのか?」と伊達が声をかければ「されてない…」と小さな声で返事をして、またしても萩原の肩に頭をぐりぐりと押し付けだす。
「謎だな。降谷ちゃん、実は会ったことあるとか?」「だから初対面だって」何回言わせるんだよ、と言わんばかりにため息を吐いた降谷だったが「お前たちのことを助けてくれたお礼を言いたかっただけなんだ。怖がらせてごめんね」と萩原に抱かれる幼女にそっと声をかける。
嫌がっているのに、無理やりコミュニケーションを取るのも良くないだろうと降谷が考えたからだ。そんな降谷の言葉にぴくりと肩を跳ねさせた幼女が「……こわくないよ、」と言いながらチラリと降谷の方を見る。
「本当かい?嬉しいな」と微笑む降谷と目が合うなり「ひゃっ」と小さな悲鳴をあげて顔を隠すものだから松田は気付いてしまった。「コイツ、まさか一丁前にゼロ見て照れてんのか?」と驚いた顔をする松田に「あー…確かにこの間読んであげた絵本に出てきた王子様は金色の髪でしたねぇ…」と萩原も思わず苦笑いが零れる。
その言葉に「えっ可愛い…」「可愛いな…」と思わず諸伏と伊達が呟き、降谷は大きく目を見開いて固まっていた。「おーじさま、きちゃったあ」と萩原にコソコソと呟いた幼女が「ふひひっ、かみのけきらきらね」と照れたように笑って萩原にきゅうっとしがみ付く。
「良かったじゃねぇか、ゼロ。王子様だってよ」と笑う萩原だが、如何せん目が笑っていない。「ハギ、目怖いぞ」と引き気味の降谷だが、嬉しそうに恥ずかしそうに表情を綻ばせる幼女に罪は無い。
「小さなお姫様、僕とお友達になってくれますか?」と萩原の肩に乗せられていた小さな手をそっと取れば「きゃあ!」と嬉しそうに声が上がる。小さくても女の子だな、と笑みを零した降谷に「あのね、香澄ちゃんね、香澄ちゃんっていうの!おーじさまのおなまえは?」と嬉しそうな顔をするからつられて表情が緩んでしまう。
「れーくんはおーじさま?」「残念だけど、僕は王子様じゃなくておまわりさんなんだ」「おーじさまじゃないの…?」「うん、そうなんだ。ごめんね。でも、君の為なら王子様になるよ」「ひひっ、れーくんかっこいいねえ」「香澄ちゃんも、とっても可愛いよ」と笑い合う二人にジェラシーを感じる萩原と松田がいる。
「俺らと会った時あんなに照れてなかったよね?ジェラっちまうよな〜〜」「ゼロなんてしょっちゅう会えねぇんだから、どうせすぐ忘れられるだろ」と文句を言う二人に「まあゼロは昔から子供ウケ良かったからなぁ…特に女の子は」と苦笑いをせずにはいられない諸伏がいた。