プライドも意地も全部捨てて

外で会っても声をかけないでくれって降谷に言われてたから黙ってたけど「浮気現場を見られた時に正当化するための理由だとは思わなかった」ってやけ酒する香澄ちゃんに「浮気とは限らないじゃん?」「仕事の相手とかじゃねえの」「守秘義務もあるしなぁ」って付き合ってあげる萩原たちがいる。

「金髪美女と腕組んで歩いてましたけど。そのまま二人でホテルに入っていきましたけど。私と目が合ったのにフォローの連絡一つ無いんですけど」ってグラスの中のお酒を一気に煽ってダンッ!と机に置いた香澄ちゃんの言葉だけ聞いたら完全に降谷の落ち度でしか無くて全員「「それはアイツが悪いな」」って一瞬で手のひらを返す。

「信じてるよ。そんなこと、する人じゃないって」って空になったグラスを両手で握り締めた香澄ちゃんが小さな声で呟く。「分かってる。仕事だってことくらい、分かってるよ」って言いながらじわじわ涙を浮かべて「でも、分かってても、理解はできても、いやだった」ってぽろぽろ涙を流す香澄ちゃんの健気さに全員胸が痛くなる。

降谷の部署を考えれば香澄ちゃんを巻き込まないために知らない人のフリをするようにと言ってるのは理解できる。勿論、降谷が浮気なんてことをするような人物ではないことも重々承知している。

「うん、そうだよね。嫌だよね」って萩原が香澄ちゃんの背中をそっと撫でて「嫌な事は飲んで忘れちまえ」って松田が新しいお酒のグラスを渡してくれる。「本当は口止めされてたんだが…前にどれだけ苦しい仕事をしていても、香澄ちゃんがいてくれるから頑張れるんだってゼロが言ってたんだ」って伊達が香澄ちゃんの頭をぽん、と撫でる。

「俺も、大事な奴がいるからゼロの気持ちは分かるんだよ。ゼロは、間違いなく香澄ちゃんのこと、大好きだぞ」って笑った伊達にじわじわ涙が出てきて、松田に渡されたグラスをぐいっと傾けた香澄ちゃんが「そうだと、いいな」ってへにゃっと泣きそうな顔で笑う。

そのまま酔い潰れて寝ちゃった香澄ちゃんの写真を撮って『このまま持ち帰っていい?』って萩原がメッセージを送れば鬼電がかかってきて「今どこだ」って言われるからお店の場所を伝えれば、数十分後には息を切らした降谷がやって来る。

「随分余裕ねえじゃん」ってケラケラ笑う松田に「……うるさい」って降谷が返して「その余裕の無さを香澄ちゃんにも見せてやりてぇな」って伊達も楽しそうに笑う。

「勘弁してくれ。こんな格好悪いとこ、見せてたまるか」って唇を尖らせて不満ですって顔をする降谷に「ほんっとさぁ、そういう意地張ってると愛想付かされちゃうよ」って萩原がため息を吐く。

「大事なものはプライドも意地も全部捨てて大事ですって言わないとダメだよ」って言う萩原に降谷がぐっと押し黙る。「手、離されたら終わりだよ」って肩を竦めて笑う萩原に「…分かってる」って降谷が拳を握り締めて香澄ちゃんの顔にかかった髪の毛をそっと払ってあげる。

香澄ちゃんが「んぅ…れ、ぇくん…?」って少しだけ目を開けて、とろんとした目で降谷を見るから「随分飲んだんだな。大丈夫か?」って笑いながら真っ赤になった頬を撫でれば「れぇくんの手、冷たくてきもちぃ…」って擦り寄ってくるから可愛すぎて固まっちゃう。

「だいじょーぶ、だよ。れぇくんは、うわきなんてしてないって、しんじてるよ」ってふにゃふにゃ笑いながら「ふふ、だいすき」って言って、またすうすう寝始めた香澄ちゃんに「僕も、大好きだよ」って優しく微笑んで唇にキスを落とす。

その後は「悪い。世話になったな」って机の上にお金を置いた降谷が香澄ちゃんをふわっと抱き上げて立ち上がる。「お、太っ腹じゃ〜ん」「ゼロの奢りかよ、ラッキー」「本当に良いのか?悪いな」って笑う三人に「ありがとな」って優しい顔でお礼を言う降谷がいるよ。
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