さすがウチの暴力担当

※痛い表現アリ※いろいろ注意※

タチの悪い奴に攫われた香澄ちゃんが殴られたり蹴られたりしてボロボロになっていく過程を録った動画がご丁寧に警察学校組の皆の元に送られてきたものだから全員揃ってバッチバチにキレ散らかす話。

映像を見終わってから真っ先に口を開いたのは萩原で「……へぇ、随分俺たちのことバカにしてくれるじゃん」ってニッコリ笑ってるけど、目が全く笑ってない。諸伏も「そうだね。わざわざこんな証拠にしかならない映像まで送ってきて舐めてるとしか思えないよな」って言いながらふふって笑ってるけど同じく目が全く笑ってない。

まだ手がかりも何も掴めていないのに部屋を出て行きそうな勢いの2人に対して、真っ先に飛び出していきそうな松田と降谷が怖いくらいに冷静で、伊達も含めた3人で映像から得られるヒントを黙々と探してる。

「おい、ゼロ。この映像、別のモニターにも映せるか」って静かな声で尋ねた松田に「あぁ、すぐ手配する。班長と一緒に、先に映像の確認を頼む」って降谷がスマホを片手に部屋を出ていくから松田と伊達が静かにモニターに映し出された映像を見る。

「僕たちにこの映像を送りつけてくる、ということは恐らくすぐに駆け付けられる米花町、もしくは隣町だろう」って降谷が地図を広げる。「アイツの住んでるマンションのエントランスの監視カメラには、朝七時にエントランスと通った姿が映ってた」って松田がモニターに映像を映す。

「だが、香澄ちゃんが通勤時に必ず通るコンビニの監視カメラには映ってなかった。恐らく攫われたのはマンションからコンビニまでの間だな」って伊達が香澄ちゃんが攫われたと考えられる場所を指で差す。

映像データが警視庁の受付カウンターに置かれていたのは十七時頃。職員が発見し、その後降谷たちの元へと届けられた。犯人が直接持ち込んだ可能性が非常に高く、映像が撮影されたのは朝七時から十七時までの間ということになる。

窓から差し込む光や、窓の高さ、音の反響具合から方角や倉庫の大きさを割り出したり香澄ちゃんに手を上げている男たちの一挙手一投足から身長や体格、所作などを読み取って倉庫があると思われるエリアの監視カメラとの照合をかける。

「音声付きの映像なんて証拠だらけのモン送りつけてくるなんてな」って降谷が冷たい声で言い放って鼻で笑う。「二度とこんな舐めたマネできないようにお礼しなきゃだよなぁ」って松田もニヤリと笑うけれど目は冷たいままで。

「灸をすえるくらいじゃ足りないだろうからな」って珍しく伊達も止めずに笑っているから、もう誰も止められない。映像を見れば見るほど冷静ではいられなくなっちゃう萩原と諸伏は降谷から「可能性のある倉庫のリストだ。ここから更に絞込みは行うが、並行してしらみ潰しに当たってもらえるか」って言われて、とうの昔に部屋を飛び出していた。

香澄ちゃんが行方不明になってから丸一日が経とうとしてて、悪戯に過ぎていくだけの時間が憎らしい。季節が冬目前ということもあって、倉庫に放っておかれているであろう香澄ちゃんの体力も心配される中、萩原と諸伏は汗だくになりながら走り回る。

そして瞬きする時間すらも惜しいと言わんばかりに松田、伊達、降谷の3人が画面と睨めっこを続ける。夜が深まって肌を刺すような冷たい風が吹く中で、萩原と諸伏がようやく香澄ちゃんを見つけて「香澄ちゃん!!!」って悲鳴にも似たような声で名前を呼んで駆け寄る。

浅いけれどちゃんと呼吸をしていることに安堵の息を吐いて、次に沸き上がるのは香澄ちゃんをこんな目に遭わせた犯人への怒り。「どう思う?」って辺りを見回しながら静かに萩原に向かって尋ねた諸伏に「……多分、これもどっかで見てるでしょ」って萩原が笑う。

映像で見ていたよりももっとボロボロな姿で意識を失っている香澄ちゃんの姿を見て、とっくに二人はキレている。萩原が着ていた上着で香澄ちゃんを包むように抱き上げて、諸伏は降谷たちへと連絡をする。

「俺たちは香澄ちゃんを連れて病院直行。ここはアイツらが調べてくれるって」ってスマホをポケットにしまった諸伏に頷いて倉庫を出ようとした瞬間、がたりと入り口で音がして男たちが押し入ってくる。

ニヤニヤと笑う姿にため息を吐いた諸伏が「はぁ…こんなの相手してる場合じゃないんだけど」って呟いてジャケットを脱ぐ。ふわりと倉庫の床にそれを広げれば、萩原がその上着の上に香澄ちゃんの体をゆっくりと下ろす。

「ちょっとだけ待っててね。すぐに終わらせるから」って香澄ちゃんの頬を指先でそっと撫でた萩原がコキッと首を鳴らす。「俺、肉弾戦は陣平ちゃんほど得意じゃないんだけど」って笑いながら言えば「ははっ、何かこういうの久しぶりだね」って諸伏も笑いながらぐぐっと背中を伸ばす。

「んじゃま、ちゃちゃっとやりますか〜」って笑った萩原が駆け出して、あっという間に男たちと距離を詰める。姿勢を低くして相手の視界から消え、足を払えば男の体がひっくり返る。傍にいた男も巻き込むようにひっくり返るから「お、ラッキ〜」って萩原が口角をゆるりと上げる。

そんな萩原に向かって振り下ろされそうになった鉄パイプを長い足で諸伏が蹴り飛ばして「後ろからってのは、ちょっと野暮じゃない?」って笑いながら男の腹に重たい蹴りを入れる。萩原が相手の体勢を崩して、諸伏がそれを見逃さずに攻撃する。

「いや〜さっすが諸伏ちゃん、頼りになるねぇ」って笑う萩原に「萩原こそ、やりやすくしてくれて助かるよ」って諸伏も笑い返す。そうこうしている内に、降谷たちが駆け付けるからあっという間に形勢逆転。大幅に有利になって、次々に倒れていく男たちを見ながら萩原と諸伏が苦笑いを零す。

「さすがウチの暴力担当」「あれはさすがに可哀想」って二人で言いながら香澄ちゃんを抱き上げて撤退の準備をする。降谷たちがいれば、あとは任せても大丈夫だろうとアイコンタクトをした後で倉庫を出る。

ぐったりとする香澄ちゃんを連れて病院へと駆け込み、診断の結果、命に別状は無く暫く安静にしていれば大丈夫と言われてホッと息を吐く。無事に降谷たちとも合流をして、香澄ちゃんの怪我の具合と、逮捕した男たちの情報を交換して無事に事件は解決する。

目が覚めた香澄ちゃんが「絶対みんなが助けに来てくれるって信じてた」って包帯だらけでにっこり笑うから「…当たり前じゃん」って萩原は泣きそうな顔で微笑む。「ったく、当たり前だろうが、ばか」って松田もふいっとそっぽを向く。

「無事で、本当に良かったよ」って安心したような顔で伊達が笑って、香澄ちゃんの手を握った諸伏が「信じてくれて、ありがとう」って優しく笑う。「もう、こんなのはごめんだからな」って降谷も困ったように眉を下げて笑うから、皆にもの凄く心配をかけてしまったんだって香澄ちゃんも反省する。

その後、過保護に拍車がかかって皆からは、定期連絡と言う名の生存確認が飛んでくるようになるし、早朝や深夜の外出は絶対にNGにされたりで「そんなに警戒しなくても…ほいほい攫われたりしないですよ……」って苦笑いをすることになる香澄ちゃんがいる。
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