どうか一度だけ、願いが叶うなら

※死表現アリ※微原作沿いかも※いろいろ注意※

幼馴染の香澄ちゃんと遊びに行く約束をしてたんだけど緊急の呼び出しで行けなくなっちゃってバタバタしてて連絡も出来なくて、でもたまにある事だから「心配するから連絡してよね!」ってまたいつもみたいに怒られるんだろうなと思って仕事を終えて帰ったら香澄ちゃんが死んでる話。

仕事が終わってから何度香澄ちゃんに電話をかけても出てくれなくて「あれ?マジで怒ってる感じ?」「プリン買って帰るか」「それで許して貰えるの学生の時だけだって」「いや今でも割とこれで許してくれるぜ」って二人で言いながら香澄ちゃんの家に行くけれど留守。

合鍵で部屋に入って買ってきたプリンを冷蔵庫に入れて、テレビを付けてようやく今日起きた事件を知る。『誰でも良かった』なんて理由で目に入った人を手当たり次第に刺した男。

物騒だな、と思ったのも束の間、テレビの中から聞こえてきた『この事件に巻き込まれて__香澄さんが死亡しました』の言葉に思わず二人の思考が停止した。何を、言っているんだ。

萩原が震える手で何度も、何度も、何度も何度も何度も電話をかける。「おねがい、でてよ…ッ香澄ちゃん、おねがいだから、でて、なんで…っでんわ、〜〜ッ出てくれよ!!頼むから!!」と叫ぶ萩原の隣で松田が呆然とテレビを見つめる。

「う、そだろ…?なんで、だって、あいつ…、は…?」と唇が戦慄いて胃の奥からせり上がってくる吐き気を抑え込むように口元を抑えた。夢であれ、と何度願っても香澄ちゃんは戻ってこない。

「おれのせいだ、おれが…っ、あそこでまちあわせようって、いったから…!」と泣き崩れる萩原の横で「おれだって…ッ、もっとはやく、れんらくすれば、あいつはあのばにいなかった…!」と手のひらに食い込んだ爪が血を滲ませるほどに拳を握り締めた松田が静かに涙を流す。

どれだけ悔いても、どれだけ嘆いても香澄ちゃんは帰ってこなくて、罪悪感で押し潰されそうになる。二人のせいではないと、誰に何と言われようと二人の後悔は積み重なるばかり。

墓参りなど、行けやしない。まだ、香澄の死を受け入れられていないから。香澄の部屋を、解約なんてできやしない。まだ、香澄が帰ってくるかもしれないから。連絡先を、消せやしない。香澄から返事がくるからもしれないから。

ごめん、緊急の呼び出しが入った、先に帰ってて、ごめんね、気を付けてね、絶対埋め合わせするから。あの日を何度も、何度もやり直すようにメッセージを送っては祈るように返事を待つ。

神様、どうか。どうか一度だけ、願いが叶うなら。そう願わずにはいられなかった。自分たちはどうなったっていい。あの子が戻ってきてくれるのなら、他には何もいらない。そう願った萩原と松田の思いが届いたのか。

ある日、目を覚ますと香澄ちゃんが死んだ日に戻っていた。「朝からどうしたの…?」と玄関で首を傾げる香澄ちゃんの姿に涙は我慢できなかった。大泣きしている萩原と松田に抱き締められて、香澄ちゃんのスウェットはぐちゃぐちゃだ。

「今日は絶対、外に出ちゃダメだからね」と念を押すように香澄ちゃんに伝えた萩原と松田の元に、あの日と同じように緊急の呼び出しが入る。「香澄ちゃん、絶対だからね」「一歩でも外に出たらぶっ飛ばすからな」と怖い顔で念を押してくる二人に「はいはい、分かったってば…どうしたのよ、ほんとに…」と苦笑いをした数時間後。

爆弾の解体中に萩原が死んだ。その事件の犯人を追って松田も、その後すぐに死んだ。二人の死を受け止めきれずに泣きじゃくった香澄ちゃんが毎日のように祈る。神様、お願いします。どうか、どうか彼らを連れていかないで。お願いします。

二人が帰ってきてくれるのなら、私は何だって差し出します。だから、お願い。そんな香澄ちゃんの願いが届いたのか、時は巻き戻って萩原が死んだ日の朝だった。

互いが互いを思うが故に無限ループが起きてしまう。何度死んでも想いの強さが時を戻す。三人全員が生き残るためにあの手この手を尽くすけれど、毎回必ずどこかで誰かが欠けてしまう。

いつかやり直しができなくなる日がくるかもしれない…と恐怖に怯えながら三人全員の生存を目指すお話。
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